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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2822号 判決 1967年5月31日

控訴人 有限会社東京商社破産管財人桃井健次

被控訴人 明和商事株式会社

右訴訟代理人弁護士 岡村大

主文

原判決を次の通りに変更する。

被控訴人の破産者有限会社東京商社に対する横浜地方裁判所昭和三八年(フ)第六号破産事件における破産債権が金五百六十九万千八百四十六円であることを確定する。

被控訴人その余の請求を棄却する

訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五分し、その一を被控訴人の負担、その余を控訴人の負担とする。

事実

<全部省略>

理由

<証拠省略>によれば、被控訴人がその主張のような手形要件及び裏書の記載のある本件約束手形九通を所持していることが認められ、弁論の全趣旨により成立を認める右各書証中の符箋部分によれば、被控訴人が本件各約束手形を呈示したところ、その支払を拒絶されたことを認めることができる。

ところで本件各約束手形がその当時有限会社東京商社の社員であった幸島干城の偽造にかかることは、当事者間に争がない。そうして本件各約束手形が幸島によって偽造されるに至った経過及び幸島の右手形偽造が、使用者である前記会社の事業の執行につきなされたものと認めるべき点については、当裁判所もまた原裁判所と判断を同じくするから、原判決理由欄中の当該部分<省略>をここに引用する<証拠省略>。

以上認定の事実によれば、幸島のなした本件各約束手形の偽造は被控訴人に対する不法行為を構成するものというべきであり、有限会社東京商社はその使用者として、被控訴人がこれによって蒙った損害である前記割引交付金額を賠償すべき義務がある。控訴人は、幸島の本件各約束手形の振出と右損害の発生との間には久松が介在するから因果関係がない旨主張するけれども、本件各約束手形を久松に宛てて振り出す時は、同人がこれを他から割引を受けるであろうことは、当然予見できるところであるから、右主張は理由がない。<省略>

次に控訴人の過失相殺の主張について考えるのに、被控訴人に本件各約束手形を割引くについて過失があったというような事実を認めるに足りる証拠は存在せず、却って原審における被控訴会社代表者梶原義十の本人訊問の結果によれば、被控訴会社としては、久松は昭和三四年頃からの取引先であって、それまで特段の支障もなく取引を継続して来たこと、また以前有限会社東京商社振出の数枚の約束手形金額合計金三百六十万円を、久松の依頼により割引いたところ、右手形は支障なく決済されつつあったこと、本件各約束手形にもそれぞれ手形金額に見合う金額の商品の受取書(甲第一ないし第五号証の各二、同第六号証の二ないし四、同第七号証の三、同第八号証の二)が添付されていたため、商品代金の支払手形であるとの久松の言を信じたこと等の事実が認められる。そうして右認定の事実によれば、被控訴人において振出人に手形振出の有無を問い合せるとか、銀行への届出印鑑を調査する等の処置をとることなく、手形の割引に応じても、この点について被控訴人に過失があると解するのは相当でない。よって控訴人のこの点に関する主張も採用できない。<省略>従って本訴請求は、被控訴人より控訴人に対し、右破産事件における破産債権として、破産者有限会社東京商社に対し、前記損害賠償債権金四百七十四万三千二百八円及びこれに対する各割引金交付後である昭和三六年一月一日以後破産宣告前である昭和三九年一二月三一日まで年五分の割合による遅延損害金債権金九十四万八千六百三十八円合計金五百六十九万千八百四十六円の債権を有することの確定を求める限度でその理由がある<以下省略>。

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