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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)623号 判決

被控訴人は控訴人等に対し、(イ)、所有権移転請求権保全仮登記及び所有権移転登記の各抹消を求めるほか、(ロ)控訴人春山に対し本件(二)の土地について同控訴人のなした分割の登記及び分割後の本件(三)の土地の各抹消を求めているので、右(ロ)の請求の許否について次のように付言する。

まず、被控訴人は右の(ロ)の請求において「分割後の本件(三)の各土地の登記」の抹消を求めているのであるが、これは、被控訴人の釈明するところによれば、分割登記そのものの抹消を求めるものであつて、分割登記後の諸々の登記の抹消を求める趣旨ではないというのであるから、具体的には分割登記(分筆登記)の方法として本件(三)の(2)(3)の各土地につき新たに登記用紙を設けてなされた登記の抹消を求める趣旨と解される(因みに、(三)の(1)の土地については従前の(二)の土地の登記用紙が引き続き用いられている、甲第四号証の一ないし四、第九、第一〇号証参照)ところで、分筆登記の抹消とは、分筆登記の申請に基づき従前の登記用紙及び新たに設けた登記用紙になされた各登記を抹消して、分筆前の登記状態に復せしめることをいうのであるから、結局前記(ロ)の請求は全体として控訴人春山のなした分筆登記((二)の土地を分割して(三)(1)ないし(3)の各土地とする登記)の抹消を求める趣旨と解すべきである。

ところで、不動産登記法八一条ノ二によれば分筆登記は所有権の登記名義人(又は表題部に記載された所有者、以下同じ)の申請によつてなすべきものとされており、本件分筆登記当時(二)の土地の所有権の登記名義人であつた控訴人春山の申請によつてなされたものであるから、一応適法な登記ということができるし、また、分筆登記の抹消は不動産の表示に関する登記手続の一種であつて本来所有権の登記名義人の単独申請によつてなされるべきものであるから、そのような登記手続について登記請求権が成立しうるかどうかという疑問もないではない。更に、被控訴人は、分筆登記がなされたままであつても、分筆後の(三)の各土地の登記用紙になされている所有権移転登記の抹消を求めることにより自己の所有権の登記名義を回復することができる――その後で合筆登記をすることもできる――から、敢えて分筆登記の抹消を求める必要はないという考え方もあろう。しかしながら、不動産登記法が分筆登記を所有権の「登記名義人」の申請によりなすべきものとしているのは、不動産登記手続における登記官の形式的審査主義に由来するものであつて、分筆登記の申請は実質的には当該土地に関する一種の処分行為として本来所有権者によつてなされるべきものである。従つて、本件の場合のように、所有権の登記名義人ではあるが所有権を有しない者の申請によつてなされた分筆登記は実質的には違法な登記というべきである。また、分筆登記の抹消は前述のように不動産の表示に関する登記手続の一種であつて所有権の登記名義人の単独申請によつてなされるべきものであるから、登記権利者及び登記義務者の協同申請によるのを原則とする権利に関する登記手続について登記請求権が認められるのとその根拠は必ずしも同一ではないとしても、本件のような場合所有権者である被控訴人は、登記上所有名義を有するにすぎない控訴人春山の申請によつてなされた分筆登記を自己の所有権に対する一種の妨害であるとしてその排除(抹消)を求める権利を有するものと解するのが相当である、なお、分筆登記をそのままにして被控訴人がその所有名義を回復することも可能であるという点は前述のとおりであるが、分筆登記がなされていることにより被控訴人が不利益を受ける面のあることを無視することはできないから、被控訴人がその抹消を求めるについて利益を有しないとして右の請求権を否定すべきではない。

(三淵 伊藤 村岡)

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