東京高等裁判所 昭和39年(ラ)131号 決定
本件記録によると、原裁判所は訴状に関する民事訴訟法第二二八条第一、二項の規定にのつとり、本件異議申立書に相手方の表示がないとしてその補正命令を発した上、抗告人がこれに応じなかつたので命令をもつて異議申立書を却下し、その原本を抗告人に返還したことが明かであるから、この却下命令に対する抗告状には、同条第四項により、却下された異議申立書の原本を添付しなければならない。
もつとも、競売開始決定に対する異議申立は訴と異なり、特定の相手方に対する関係での請求の当否の判断を求めるものでなく、執行裁判所に対する違法、不当な執行の是正を求める申立であるから、その申立書に訴状に関する規定、特に対立当事者の表示に関する部分を準用して相手方の表示を不可欠とみることには疑問があり、したがつてこれを前提とした原審の処置には疑の余地がないとはいえないが、すでに訴状に準じて却下命令があつた以上は、これに対する不服申立は訴状却下に関する前記規定の方式に従つてなされるべきものである。
ところが抗告人は抗告状に右異議申立書原本を添付せず、当裁判所が右欠缺の補正を命じ、右命令は昭和三九年一一月一七日抗告人に送達されたのに、右命令所定の期間内にその補正をしないので、本件抗告は前記条項所定の要件を欠く点で不適法なものというべきである。(これを実質的にみても、当該申立書の添付がなければその形式要件の適否したがつて原命令の当否の判断をなしえないし、その副本等の存在により右の点の審査は可能であるとしても、原命令を取消すべき場合には、その取消だけでは当初の異議申立があつた状態は回復されないから、その取消とともに異議申立書原本を原審に差戻さなければならないと解すべきところ、右原本の提出がなければその差戻の措置もとれないこととなり、かくては抗告の目的は達成されないこととなる。)
(千種 渡辺一 和田)