東京高等裁判所 昭和39年(ラ)412号 決定
抗告人の申立は、記録上明らかなとおり、民事訴訟法第五四四条で異議を述べ、異議却下の決定に対して即時抗告したものであるが、競売物件の価額の鑑定は執行裁判所の執行処分とはいえないから、これに対して民事訴訟法第五四四条の異議の申立をすることはできない。
(一) しかし、抗告人の本件申立は昭和三九年六月一二日に競落期日の開かれる直前に書面によつてなされたものであるから、これはむしろ民事訴訟法第六七一条(競売法第三二条で準用)の異議の申立と解することもできる。そして、同条による異議の申立に対しては競売裁判所はとくに応答する必要はなく、裁判所がその異議を認めたときは、競落を許さない旨の決定をすべきであり、また異議の理由がなくその他の理由からも競落を許すべきものと判断したときは、競落許可の決定をすれば足りるのである。
抗告人主張のように、競売期日の公告に表示された競売土地の坪数とその実測坪数との間に著しい相違があつて、そのため右公告に掲載した最低競売価額に影響を及ぼすと認められる場合には、不動産の表示が正確でないのみならず価額の算定についても相当とはいえないから、民事訴訟法第六五八条第一号、第六号の表示を具備せず、同法第六七二条第四号の異議事由となる余地がある。(大審院昭和七年(ク)第一〇五三号、同年九月一〇日第四民事部決定、大審院民事判例集第一一巻一七六一頁。)
従つて競売裁判所としては、抗告人の申立を民事訴訟法第六七一条の異議申立として扱い、すみやかに競落について許否の裁判をすべきである。
(二) しかしながら裁判所が応答の必要がないのに決定の形式で裁判を与えたときは、申立人は民事訴訟法第五五八条により即時抗告の方法によつて不服を申立てることができると解すべきである。ところで抗告審としては、抗告人の不服の理由にかぎらず、原決定の当否を判断すべきものであるところ、既に説示したように、原審は裁判すべからざるものを裁判したのであるから違法な決定として取消を免れない。
(毛利野 平賀 加藤)