大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(ラ)595号 決定

本件記録によれば、利害関係人株式会社愛国電線工業所は抗告人に対する(イ)小切手金債権金二四万一、九四八円、(ロ)約束手形金債権合計金五〇五万八七五円、(ハ)売掛代金債権合計金七〇万五、二九七円の債権に基づき、根抵当権の実行として抗告人の所有不動産につき本件競売申立をなし、原審は昭和三九年一〇月二九日の競落期日に最高価競買申出人大塚護に対して競落許可決定の言渡をなしたものであることが明らかである。而して、抗告人提出の領収証二通(第二三一丁及び第二三五丁)によれば、抗告人は右申立債権に対し、昭和四〇年一月八日右(ロ)の債務及びこれに対する同日迄の遅延損害金合計金五九七万五、一八六円並びに競売申立手続費用概算として金一八万円、以上合計金六一五万五、一八六円を支払い、更に同年四月一九日前記(イ)及び(ハ)の債務並びにこれに対する同日までの遅延損害金合計金一一六万九、五二七円を支払い申立債権の全額及び申立手続費用の概算金額を完済したことを認めることができる。右事実によれば、本件競売申立にかかる前記根抵当権はその被担保債権が消滅して存在しないこととなつたのであり、他方、民事訴訟法第五五〇条第四号の規定によれば、強制執行の場合において債権者が弁済を受けた旨を記載した証書が提出せられたときは、執行を停止又は制限すべきものとされているのであるから、本件が任意競売の場合であつて債務名義の存在を必要としない点に鑑み、上記のごとく債務者が債務の全額を弁済した場合には、本件競売申立は実体上の理由を欠き、競落を許すべからざるものとするを相当というべきである。

よつて、原決定を取消し、本件競落を許さないものとし主文のとおり決定する。

(村松 江尻 兼築)

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