大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(人ナ)3号 決定

請求人(被拘束者) 田島大二郎

拘束者 静岡地方検察庁沼津支部検察官 堀部玉夫

〔抄 録〕

本件救済請求書の記載によれば、請求者の主張は、「請求者は、昭和三八年一月六日未明その住居である沼津市幸町九二番地田村荘アパート前の道路上において緊急逮捕ということで沼津警察署に連行され、その侭留置されて現在に至るまで勾留されている。しかし、これについては勾留状の執行手続もなされず、請求者は訳のわからぬ侭強制拘束されている次第であるから、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されているものとして、その救済を求めるため本件請求に及んだ。」というのである。

ところで、請求者は人身保護法第五条、同規則第七条に定める疎明方法としては、格別に文書その他の物件を提出するところがないが、その提出にかかる救済請求書の記載に徴するに、請求者に対する強姦致傷被告事件(当庁昭和三八年(う)第一二九八号事件)の記録を疎明方法として援用する趣旨と解される。よつて右記録についてみるに、請求者は昭和三八年一月六日午前五時五〇分頃、相原治江に対する強姦致傷の容疑で刑事訴訟法第二一〇条第一項に基き逮捕され、同日静岡地方裁判所沼津支部裁判官林輝により同規定に基く逮捕状が発せられたこと、次いで請求者は同月八日同支部裁判官浅野達男の発した勾留状に基き沼津警察署に勾留され、その後右勾留状及びその勾留更新決定により引続き勾留され、その間東京拘置所に移監されて現在に至つていることが知られる。

請求者に対する拘束の事実は右のとおりに認められるところ、その現在における拘束者は人身保護規則第三条に照らし、東京拘置所長であると解され、本件救済請求者に拘束者として表示するところと異るけれども、本件請求は東京拘置所長を拘束者としての救済をも求める趣旨であることが窺われないではない。しかし、前掲記録に徴するに、本件拘束に関する前記の勾留、勾留更新決定等の裁判が法令の定める方式もしくは手続に違反していることが顕著であるといえないことは極めて明らかである。

よつて本件請求は人身保護規則第四条に定める救済請求の要件を欠くものという外ないから、人身保護規則第二一条第一項、第一八条によりこれを棄却することとし、手続費用は人身保護法第一七条、民事訴訟法第八九条の各規定に則り請求者の負担とし、主文のとおり決定する。

(岸上 目黒 安岡)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!