東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)102号 判決
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〔判決理由〕(審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本件審決は、本願発明が原告主張の(イ)、(ロ)および(ハ)の各技術を結合したことを特徴とする割軸受装置にかかり、割軸受、すなわち滑り軸受において、これらの技術を結合したことにより特有の作用効果を奏するものである点について判断を誤つたものといわざるをえない。すなわち、
前掲当事者間に争いのない本願発明の要旨<証拠>を総合考察すると、本願発明は、本件審決認定のとおり割軸受装置(編注―枠体の両側壁に施された軸挿通用孔壁面の溝内に、V型状をなし、そのV型状内にグリースの装填された上下二つ割のオイルシールを固着し、枠体内に潤滑油を軸受中心位まで供給した割軸受装置)にかかり、その特徴とするところは、割軸受、すなわち、滑り軸受において、原告主張の(イ)、(ロ)、(ハ)の技術(編注―(イ)軸受装置における軸受箱を上下二つ割にし、それぞれにオイルシールを装着すること、(ロ)ロオイルシールを上下二つ割にすること、及び(ハ)油室内に油を軸の中心位以上供給すること)を結合した点にあり(これらを結合した発明が従来存在しなかつたことは、被告の認めて争わないところである。)、本願割軸受装置は、これにより、(1)軸受の枠体およびオイルシールが、いずれも二つになつているため、その組立が容易であり、(2)枠体の両側壁に施された軸挿通用孔の溝内にオイルシールを固着し、オイルシールのV型状内にグリースを装填したため、潤滑油が漏れることなく、(3)枠体内へ潤滑油を軸受中心位まで供給したため(この場合、従来のものは二つ割枠体ではなかつた)、従来のような注油機構(オイルリング、オイルカラー等)を一切必要とせず、(4)長期間無給油のまま使用できる、という一連の作用効果を挙げうるものであることおよびこれらの作用効果のすべてを一個の割軸受、すなわち、滑り軸受装置で挙げうるものは、引用例記載のものはもち論、本願出願前の公知例には、これを見出しえないものであることを認めうべく、これを左右するに足る証拠資料はない。したがつて、本願発明は、本願出願前、ころがり軸受において公知であつた前記各技術を、滑り軸受装置に採り入れ、彼此結合することにより特有の相乗的効果を挙げうるに至つたものとみるを相当とする。被告指定代理人は、この点につき、軸受は、滑り軸受からころがり軸受へと進歩したものであるから、ころがり軸受に関する公知の技術を滑り軸受に実施することは容易なことである旨主張するが、滑り軸受もころがり軸受も、それぞれの軸受として、その実施の態様およびこれを利用分野において、それぞれ固有の機能を営むものであるから、技術的発展過程における後進性の故だけをもつて、ころがり軸受の技術を滑り軸受に実施することが常に容易であると断定するわけにはゆかない。要は、その技術内容およびそのもたらす作用効果如何にあると解されるが、本願発明の技術内容およびこれのもたらす作用効果が前認定のとおり滑り軸受として特有のものである以上、右主張のような一般論から、直ちに、その主張のような結論を導き出すことは妥当ではない。
(むすび)
三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由があるものということができる。よつて、これを認容する。
(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)