東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)121号 判決
一 前掲請求の原因のうち、本願考案につき、出願から審決の成立、その謄本の送達にいたる特許庁における手続、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、右審決の取消事由の存否について判断する。
本願考案が普通の眼鏡縁及び眼鏡蔓に永久磁石を取付けたものであることは前示本願考案の要旨から明らかであり、これを普通の眼鏡の普通の用方で使用するものであることは当事者間に争いがないところ、その場合、本願考案の眼鏡に具えられた磁石が、構造上、顔面の皮膚にある晴明・瞳子〓・客主人という漢方医学の経穴に必ず接触するものであることは、本願考案の要旨中に明らかにされていないが、成立に争いのない甲第三号証の五及び第三十号証によれば、眼鏡の縁又は蔓における磁石の取付箇所が右経穴に接触するよう選択してその眼鏡を装着すれば、磁石が顔面の皮膚にある右経穴に当たる箇所に接触する場合があるであろうことが認められないものではない。
そして、本願考案の眼鏡の磁石が接触する皮膚の部分に、普通の眼鏡の縁又は蔓によつて生じる程度の触圧作用が働き、また、磁石の作用として磁場が形成されることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三号証の三、第十八号証の二によれば、皮膚に対するその程度の触圧が血液の循環を順調にすることを認めることができるが、さらに進んで、右のような効果が原告主張のように顔面の皮膚における経穴に対する局所効果として働き、直ちに視細胞及び眼部筋肉に影響を与え、原告主張のような具体的医療効果を奏することについては、本件に現れたすべての証拠によつても、これを肯認することができない。もつとも、前出甲第三号証の三によると、経穴に対する磁力線の反応及び触圧刺激の影響は未知であるが、眼筋に対する緊張緩和作用は可能性があることが認められるが、それだけではいまだ本願考案の右効果に関する原告の主張を認め難い。なお、甲第二十九号証の一ないし四には鍼灸の経穴及びその主治応用症の記載があるが、本願考案の効果に関する資料とするに足りない。
してみると、本願考案の眼鏡が原告主張の実用上の効果を奏することを前提に、右審決の判断を違法であるとする原告の主張は失当というべきである。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を理由がないものとして棄却する。
〔編註〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙図面
<省略>