大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)156号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決は、本願発明をもつて引用発明と同一発明であるとした点において判断を誤つた違法があるものであり、取消を免れない。すなわち、当事者間に争いのない本願発明及び引用発明における各発明の要旨、本願発明の特許願、明細書及びその訂正書一、同訂正書及び引用発明の特許公報とを比較考量すると、原料物質として、引用発明においては、「メタホウ酸塩」あるいは、その類似物を使用するに対し、本願発明においては、「メタホウ酸塩」にあらざるホウ酸塩またはその混合物」すなわち、「メタホウ酸塩における酸化金属と酸化ホウ素とのモル比とは異なつたモル比のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ホウ酸塩もしくはそれらの混合物」を使用するものであること、本願発明の明細書においては、メタホウ酸塩とその他のホウ酸塩とを区別するために、それぞれの塩を構成する金属とホウ素との酸化物のモル比が、前者は一となるに対し後者のメタホウ酸塩にあらざるホウ酸塩は一とならないことを利用したものであることを認めうべく、また、メタホウ酸塩とメタホウ酸塩にあらざるホウ酸塩とは、その化学的性質を異にする化合物であることは明らかなところであるから、これらの事実に徴すれば、本願発明と引用発明とは、その使用する原料物質の化学性質を異にするものであることが明らかであり、したがつて、両者は、この点において、すでに同一発明とすることができないこともまた明らかなところというべく、これを左右するに足る証拠資料はない。なお、引用発明における「類似組成の金属酸化物―酸化棚素―混合物」の意味は、「混合物中における金属酸化物の酸化ホウ素に対する割合は、必ずしも1:1でなくてもよく、少々の偏差はメタホウ酸塩の製造のさい常に入つてくるのであつて、より大きい偏差は有害もしくは原料の無駄であるから避けるべきである」旨の記載に照らし、メタホウ酸塩の製造のさい必然的に生じる程度の偏差内の組成物を指すものとすべきである。

被告は、この点に関し、ホウ酸はメタホウ酸を包含する上位概念であり、また、本願発明の実施例四にはマウ酸カルシウムが挙げられているから、本願発明と引用発明との原料物質に関する差異は、はなはだ、あいまいである旨主張するが、本願発明においては、原料物質として「メタホウ酸塩における酸化金属と酸化ホウ素とのモル比とは異なつたモル比のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ホウ酸塩もしくはそれらの混合物」を使用し、引用発明においては、「メタホウ酸塩」あるいはその類似物を使用すること前認定のとおりであるから、両者の区別は明確というべく、また、本願発明の実施例四のホウ酸カルシウムは、前記「メタホウ酸塩における酸化金属と酸化ホウ素とのモル比とは異なつたモル比」のホウ酸カルシウムであることは前掲本願発明の要旨から容易に窺知しうるところであるから、被告の右主張は採用に値しない。

また、被告は、本願発明において、各種のメタホウ酸塩にあらざるホウ酸塩を種々の割合で混合すると、その混合物全体の酸化金属と酸化ホウ素のモル比が一となる場合も、一より大となる場合もあるが、後者の場合は、引用発明の許容範囲の偏差内にあるから、混合物の場合は、両発明の原料物質は一致する旨主張するが、本願発明における混合物は、メタホウ酸塩にあらざるホウ酸塩の混合物であるから、その混合物全体の酸化金属と酸化ホウ素のモル比が一になつても、その混合物がメタホウ酸塩となることもなく、一より大になつたためにメタホウ酸塩の類似化合物となることもないことは、反応上明白なところであるから、被告の右主張も当を得たものということはできない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張のような違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、爾余の点につき判断を用いるまでもなく、理由があるものということができる。よつて、これを認容する。

(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)

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