大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)97号 判決

(争いのない事実)

一 本件権利範囲確認審判事件に関する特許庁における手続の経緯、本件登録実用新案説明書における「登録請求範囲」の記載、(イ)号物件の構造及び本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。

(審決を取り消すべき事由の有無について)

二 前掲当事者間に争いのない事実に成立に争いのない甲第二号証(本件実用新案公報)を参酌すると、本件登録実用新案は、別紙第一の図面に示すように、

(一) 多数の孔1を穿つた金属板2の数個の孔1の縁を内方に折曲して截頭円錐状の折曲筒部4を構成したこと、

(二) 折曲筒部4に拡開部5を有する筒体6を嵌めたこと、

(三) 筒体6の上端と金属板2の立ちあがり部3の上端とを一致させたこと、

の三つの構成要件から成る吸音板の構造にかかり、このような構造をもつことにより、別紙第一の図面第二図に示すように、筒体6に木螺子9を挿通して野縁7に取りつける際、野縁7に筒体6の上端及び立ちあがり部3の上端が接しているため、木螺子9を必要以上にねじこみ、金属板2の面に歪みを生じさせるようなことがなく、金属板2を平垣に体裁よく、確固に、かつ、簡単容易に取りつけることができるという作用効果をあげうるものであることを認定しうべく、これを左右するに足る資料はない。

しかして、右認定の事実によれば、本件登録実用新案においては、野縁7に吸音用の板8を取りつけるにあたつては、吸音用の板8に孔1を穿つた金属板2をかさね木螺子9をもつて固定するのであるが、木螺子9をねじこみすぎて金属板2の面に歪みを生ずることのないようにすることを考案の趣旨とし、そのための技術手段として、金属板取付用の木螺子9を誘導支持する筒体6の高さを、金属板2の立ち上り部3の上端と一致させた構造としたものであることが明らかである。

この点に関し、原告は、前記立ちあがり部の構造の点は、本件登録実用新案においては、枝葉末節のことに属し、附加的構造である旨主張するが、その当を得ないものであること前段の説示に徴し、多くの説明を要しないところである。

しかるところ、他方、本件権利範囲確認審判の対象物である(イ)号物件が、本件登録実用新案における前記(三)の構造に対応する金属板の立ちあがり部の構造において、筒体6の上端にフランジを設けて金属板2の立ちあがり部上端より突出させていることは、当事者間に争いのないところであるから、(イ)号物件は、本件審決認定のとおり、本件登録実用新案の構成要件の一である前記(三)の構造を欠き、これに伴い、取付時における作用効果において差異を有するものであることは明らかであるといわざるをえない。しかして、(イ)号物件がその構造において構成要件の一を欠き、しかも、その作用効果において異るものがある以上、他の構成要件の点について論究するまでもなく、(イ)号物件は、本件登録実用新案の権利範囲には属しないものというほかはない。原告は、この点に関し、両者は作用効果において差異はなく、(イ)号物件における前記構造上の差異は、本件登録実用新案の権利をのがれんがためにしたものである旨主張するが、この主張の採用しがたいことを前説示に照らし明白である。

(むすび)

第三 以上説示のとおりであるから、その主張の違法があることを理由として本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものというほかはない。

〔編註〕 本件に関する図面、(イ)号図面および説明書は左のとおりである。

第一 本件登録実用新案

<省略>

第二 (イ)号物件(図面及び説明書)

<省略>

(イ)号図面の説明書

別紙添附の(イ)号図面中、第一図は斜面図、第二図は取付状態を示す縦断正面図である

多数の孔1を穿つた金属板2の、数個の孔1の縁を内方に折曲して截頭円錐状の折曲筒部4を構成し、該折曲箇部4に、内方に拡開部5を有する一定高さの筒体6を四隅に嵌めて固定した吸音板で、符号3は立あがり部、7は野縁、8は吸音板、9は釘、6aは、筒体6のフランジ、6bは筒体6の釘孔、10は止爪である

以上

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