東京高等裁判所 昭和39年(行ナ)162号 判決
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 当事者間に争いのない本願発明の要旨に成立に争いのない甲第二号証の三、同第八号証及び第九号証の各記載を参酌考量すると、本願発明は、油圧シリンダの作動により軸受を軸点として揺動自在ならしめられた揺動枠体の後端にコンベヤ枠体を枢着し、このコンベヤ枠体の他端寄りを上記揺動枠体から延長した支枠に懸吊して、コンベヤ枠体を仰伏自在とし、かつ、強力な扛上作用を行なわしめるようコンベヤ枠体に油圧シリンダを付設し、このコンベヤ枠体をアームとし、その先端にほぼアームに対し直線状に扛起するよう駆動されるシヤベルを取り付け、掘さくに当たつては、シヤベルのアームに対する取付けを緊張させ、アームに対しほぼ直線状となるまでシヤベルを扛起させると同時にシヤベルの刃先を被掘さく体に喰い込ませつつ、前記アームを上向きの姿勢とし、このシヤベルとアームの協働作用によつて被掘さく土を掘さくしようとする構成のものであり、この構成の結果、シヤベルはアームと協同して掘さくを行なうから、広角度の弧線を画いてシヤベル上方の土塊を残らず一挙に掻き取り、掻き取られた排土はアームの機能を兼ねているコンベヤにより直ちに搬送され、したがつて、坑道のようなきわめて狭隘な場所においても、強力にして、かつ、効率のよい掘さくが可能となる効果を挙げうることを認めることができる。
原告は、本願発明におけるシヤベルの回動範囲について、上向きにならない構造である旨主張し、前掲甲第二号証の三(願書添付図面)の記載のうちには、シヤベルで上向きでない状況を図示する部分があるが、本願発明の明細書(前掲甲第八号証及び第九号証)の説明には必ずしもこの点が明示されているとはいいがたいのみならず、コンベヤ枠体との協働作用を行なわせるための機構として、右のような構造をとつたことによる格段の作用効果を認めるべき証拠はない。
原告は、本願発明の右認定の構成中コンベヤ枠体をアームとしてシヤベルとともに掘さく作用を行なわせようとする点についての技術的思想は引用例に開示されておらず、そのすぐれた効果に照らしても引用例から容易に推考しうるものではない旨主張するから、考えるに、成立に争いのない甲第十一号証の記載に徴すると、被告も指摘するとおり、一般にシヤベル機において、シヤベルのみならず、アームをも同時に作動させて掘さく作用を行なわせるという技術的思想は、すでに本願出願前周知のことに属することが明らかであり、また、成立に争いのない甲第十号証によると、掘さく機械において回転台枠の旋回機構や扛重枠の上下機構として油圧シリンダを用いることも本願出願前周知であるから、引用例における伝送器の中間部のねじ機構を油圧シリンダ機構に置き換えて、伝送器(本願発明のアームに相当)を掘さく作用にあずかるように構成することは容易になしうるところであり、本願発明の右構成による効果も、通常の予測の範囲をこえない程度のものと認められるから、この点は格別の発明を構成しないものといわざるをえず、原告の右主張は理由がないというほかない。
なお、原告は、引用例記載の技術内容に関する本件審決の認定について争うところがあるが、引用例のものにおいて、シヤブルは軸を中心として上下に擺動可能の構造であり、掘さくにあたつては、シヤブルを最下位ならしめたうえ、機械全体を前方に移動せしめて被掘さく物の下にシヤブルを圧入し、つぎにシヤブルを軸を中心として上方に回動せしめて被掘さく物を掬い取るものであることは、成立に争いのない甲第六号証(引用例)により明らかであるから、この点についての本件審決の認定に原告主張の誤りはない。
結局、引用例において、シヤベルとコンベヤ枠体との組み合わせが公知とされており、この種掘さく機においてシヤベルとアームの協働作用を利用することはきわめてありふれた構成であるから、前記コンベヤ枠体にアームの役割を負わせるように構成することは本件審決の挙げる引用例の記載からみれば、容易に考えられるところといわなければならない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。