東京高等裁判所 昭和40年(う)2644号 判決
被告人 木川新太郎
〔抄 録〕
論旨は、原判決はカメラ部品とカメラ付属品とを混同し、本件カメラ用接写リングやレンズフードはカメラ付属品であるのに、これをカメラ部品と認定するの誤りを犯している。しかして本件商標権の範囲は写真機並びにその部品であつて、付属品に及んでいない。従つて、カメラ付属品を販売したからといつて、商標法違反に問われる理由はない。然るに、原判決が、カメラ付属品を販売したのに過ぎない被告人を商標権侵害の罪を犯したものとしたのは判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ひいては法令の解釈適用を誤つた違法があり、到底破棄を免れないというのである。
按ずるに、カメラ部品とは、カメラの構成部分をなすものであつて、カメラに欠くべからざるものを言い、カメラ付属品とは、カメラの構成上欠くべからざるものではなく、カメラの効用を増すためこれに付加して使用するものを指称するものであるところ、接写リングは接写をする際カメラに付加して使用するものであり、レンズフードはレンズに逆光線の入るのを防ぐため使用するものであるから、いずれもカメラの部品ではなく、付属品であることが明白である。然るに原判決が、右接写リング及びレンズフードをいずれも写真器用部品と判示したのは誤りであつて、この点において原判決は事実を誤認したものというべきであるけれども、原判決挙示の関係証拠によれば、原判示のとおり、旭光学工業株式会社は、それぞれの指定商品につき「PENTAX」及び「ASAHI PENTAX」なる各連合商標の登録権利者であり、前者の指定商品の一である「写真用の器械器具」(原判決に、「写真教育用の機械、器具」とあるのは「写真、教育用の機械、器具」の誤記と認める。)及び後者の指定商品の一である「写真機械器具」には、カメラの付属品が含まれるものと認めるのが相当であるから、旭光学工業株式会社がカメラ付属品たる接写リング及びレンズフードについて、前記各登録商標に基ずく商標権を有するものであることは言うをまたず、またミノルタカメラ株式会社は原判示指定商品につき「MINOLTA」なる連合商標の登録権利者であり、写真機械器具の付属品もその指定商品として明示されているので、同会社が同様レンズフードによつて右登録商標に基づく商標権を有するものたることもまたまことに明白である。然るに被告人が、原判決の摘示するように、前記旭光学工業株式会社の前記各商標に類似する「PENTAX」または「FOR ASAHI PENTAX」なる商標を接写リング及びレンズフードのケース、包装紙箱に付し、前記ミノルタカメラ株式会社の前記商標に類似する「FOR minolta」「FOR MINOLTA」または「FOR Minolta」なる商標をレンズフード、そのケース、包装紙箱に付して、右各付属品を他に譲渡、引渡しをし、もつて右両会社の各登録商標に類似する商標を使用したことは、原判決挙示の各関係証拠によつて優にこれを肯認し得るところであるから、被告人がこれによつて右両会社の各商標権を侵害したものであることは明白であつて、右接写リング及びレンズフードを写真器用部品と認定した原判決の誤りは何ら判決に影響を及ぼすものではない。さすれば論旨は理由がない。
(松本 海部 石渡)