東京高等裁判所 昭和40年(く)36号 決定 1965年4月17日
少年 W・T(昭二〇・八・一八生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告申立の趣意は要するに、少年は本件非行に際し被害者に対して何等の暴行脅迫を加えず共犯者に附和随行して従犯者的な地位を占めたに止まり、非行後における少年の反省も顕著で被害者の感情も宥和しており、家庭の保護能力の回復、生活環境の改善、勤労意欲も顕著であるので、少年の保護育成のためには保護観察処分を以て充分であるのに、原審はこれらの事情の認定乃至評価を誤り鑑別結果を看過し且伝聞証拠によつて少年が○○会に所属するものと認め、以て少年を処罰することを目的として審判したもので、原決定は著しく不当であるからその取消を求めて本件抗告申立に及んだというに帰する。
しかしながら、所論に基き事件記録及び調査記録を精査するに、本件非行は少年が友人A及びBと共謀してレストランより当時一六歳の少女を誘い出しアパートの一室に連れ込んで輪姦したもので、実行に先き立ち主導的役割を果したのはAであつてB及び少年が随行したこと所論指摘のとおりであるが、B及び少年は被害者がAの暴行及び脅迫によつて反抗を抑圧され且姦淫されたのに引き続いて順次いずれも姦淫を遂げたもので到底従犯的地位にあるものとはいえず、昭和三九年四月二四日東京家庭裁判所において恐喝保護事件につき不処分となり従前から続行されていた保護観察のもとにありながら、同年一〇月頃から予て暴力団○○会の末端に所属していた当時の友人である前記共犯者等との交遊が復活して同年一一月頃から徒食するうち本件非行に及んだ経緯並びに従前の生育環境の負因とこれに基づく性格の歪み及び非行性定着の程度に徴し、鑑別結果に窺われる処遇上の所見にも拘らず、少年の健全な保護育成のためには収容保護が不可欠と思料される。また、少年保護事件の手続においては、調査審判の契機となる非行事実の認定についても自由な証明で足り、原審が少年を処罰する目的のもとに審判したものとは到底認められず、その他所論のすべてを参酌考慮しても原決定には何等違法乃至不当の廉は認められない。
よつて本件抗告は理由がないので、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に則り、これを棄却することとして主文のとおり決定する。
(裁判長判事 渡辺好人 判事 目黒太郎 判事 深谷真也)