大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1228号 判決

……によると次の事実を認めることができる。すなわち、控訴会社は東京都内を中心として前記営業目的に附帯する土木工事の請負等の業務をも行つていたが、予てその営業区域の拡張を企図し、茨城県一円及び福島県南部を営業区域とする控訴会社茨城営業所を水戸市内に設けることとし、同営業所の責任者として前記堀田豊を採用し、本社から出向の社員一名及び現地採用の数名の従業員をこれに配し、昭和三九年二月頃から右営業所を発足させた。右堀田は同営業所の責任者として控訴会社のため同営業所所管の土木建築工事の受注、工事の施工監督、工事のための重機類の賃貸先の開拓等の業務にたずさわつていたが、間もなく業務遂行上の便宜のため、自から第一建機茨城営業所長の呼称を用いるようになり、「第一建機茨城営業所所長堀田豊」とするゴム印や名刺を使用し、またその作成する文書に押印するために「第一建機茨城営業所之印」と刻した印章を作り、これらを日常の業務の用に使用していた。昭和三九年四月一七日右営業所の運営方針及び堀田の権限を明確ならしめるため、本社側から社長小和田桃太郎外二名、茨城営業所から堀田外一名が出席して同営業所の業務運営方針その他について協議した結果、工事請負契約、重機賃貸契約については本社直接の所管事項とし、同営業所及びその責任者としての堀田は直接これを締結する権限を有しないこと、業務のため外部から自動車、重機等を賃借する場合は控訴会社本社において直接契約に当たることなどが決定確認されたが、その後も右のごとく特に限定された重要事項以外の事項は右営業所において決定処理されていた。また、右堀田に対しては契約高に対する歩合給が支給されるほか、別に月額一万円の接待費が支給され、右営業所の業務に使用する用紙類は控訴会社から、その商号、本店所在地、マーク等を刷り込んだものが交付されていた。そして、右営業所には前記控訴会社からの出向社員のほか随時重機類が運転者とともに派遣され、控訴会社本社との間には終始連絡がとられていたし、その間本社役員の出張もあり、前記堀田が営業所長の呼称を用いて業務の遂行に当つていたことは控訴会社においても当初からこれを知り得る事情にあり、取締役小和田浩は同年三月頃には堀田が右のごとき呼称を肩書とする名刺を使用している事実を知つていたが、前記四月一七日の協議においても特に右のごとき呼称の使用を禁止する取決めはなされなかつた。前記被控訴会社との契約は、右堀田が他から受注した土木工事を施工するため控訴会社茨城営業所長名義で締結したものであるが、同人は契約締結につき本社の了解を得たものと信じてその締約の衝に当つたものである。(中略)上記認定の諸事実によれば、控訴会社は堀田豊を自己の義務に使用するとともに、同人が控訴会社茨城営業所長の名称を使用することを許諾していたものというべく、仮りに明示の許諾でないとしても少くとも黙示の許諾を与えていたものと認めるのを相当とする。そして一般に事業者が事業遂行のために営業所を設け、これに勤務する者が自から営業所長の名称を使用することを許諾している場合には、右営業所を通じて取引をなす第三者に対して自己の営業につきその者に代理権を授与した旨を表示したものと認めるのが相当であつて、右営業所長が営業所の業務範囲内においてなした行為については、相手方が善意無過失である限り、右事業者において本人としてその責に任ずべきものである。

(村松 江尻 兼築)

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