東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2330号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被控訴人らが控訴人主張の各日にそれぞれ本件物件(編者注=野口製作所製特一号バープレス〔有体動産〕)に対してその主張のような各強制執行をしたことは当事者間に争いがない。
ところが、<証拠>によれば、執行吏は、本件第一回の強制執行の際、債務者である訴外会社が占有していた本件物件を差押え、控訴人主張の場所に公示書をはり(公示書は黒板をはずさなければ外部からは見えない)、本件物件を訴外会社の保管に付したことを認めることができる。右事実によれば、右公示書は第三者の容易に認識し得ない場所に施されたものであり、右差押は、差押を明白にしてされたものということはできないから、差押債務者及び悪意の第三者に対する効力の有無はしばらくおき、少なくとも悪意の第三者以外の第三者との関係においては、無効というべく、<証拠>及び弁論の全趣旨を総合すれば、控訴人は昭和三九年一一月一日訴外岡本陽のあつ旋で東京フアースト工場から控訴人主張の工場内にあつた、同会社所有の、本件物件を含む機械その他の物件を代金一七〇万円で買受け同日手付金として一〇万円を支払い、翌二日、右売買に関する公正証書作成の際、右代金のうち六〇万円を現金で、一〇〇万円を同日付、満期同月一〇日の約束手形で同会社に支払つたこと、控訴人は同月三日右工場内で訴外会社から本件物件等の引渡を受け、同日以降これを工場内においたまま控訴人の専務取締役である松村真助に保管させていたが、同月九日ごろ右工場をその所有者である訴外内藤英亜から賃借し、本件物件等をそのまま使用して操業してきたことを認めることができ、控訴人が前記差押の事実を知つていたことを認めるに足る証拠はない。原判決は本件売買が通謀虚偽表示であると認定しているけれども、この点については、主張も立証もないから、判断しない。従つて、本件売買により控訴人が(編者注・民法第一九二条にいわゆる即時取得の規定によつて)本件物件の所有権を取得し、これを第三者に対抗できることは明白であり、被控訴人滝沢のなした照査手続は、控訴人が有効に所有権を取得した後になされたものであるから、第三者たる控訴人所有の物件に対する執行に帰することはいうまでもない。(近藤完爾 田嶋重徳 小堀勇)