東京高等裁判所 昭和40年(ネ)761号 判決
職権によつて按ずるに、被控訴人の本訴請求原因は、原判決事実摘示によつて明らかなとおり、第一次(本位的)請求として、控訴人と訴外渡辺松之丞間に締結された抵当権設定契約は通謀してなされた虚偽表示であるから無効であることを理由に右契約の無効確認(契約の無効と云う事実確認の用語が使用されているが両者間の抵当権不存在確認の趣旨であろう)とこれが抵当権設定登記の抹消登記手続を求め、右請求が認容されない場合を慮つてそれの認容を解除条件として第二次(予備的)の請求原因として右抵当権設定は詐害行為に該当するから、被控訴人は右の理由により之を取消し、右抵当権設定登記の抹消登記手続を求めたものである。このような訴の予備的併合の場合は第一次の請求が認容されれば第二次の請求については之を裁判する必要がなくなるが第一次の請求が理由がなく第二次の請求を認めるときは二つの訴訟物(請求原因)につき判断することになり、且つ第一次の請求についても既判力を生ずるわけであるから必ず第一次の請求を排斥する旨を主文で表示するを要すると解すべきである。併るに原判決は第二次(予備的)の請求を認めながら第一次(本位的)の請求を棄却する旨主文に表示していないことが認められる。尤も原判決理由中の記載によれば原審は第一次の請求を排斥していることが窺われるが、只理由中にその判断を説示するのみで主文で表示するのでなければその訴の訴訟物につき既判力を生じるものではない。従つて第一次の請求(訴)について原審は何等の裁判をもなさなかつたと同様であると謂うべく結局原判決は法律に違背したこととなるので民事訴訟法第三百八十七条により、これを取消し、第一次の請求につき、第一審の判断を必要とするので、同法第三百八十九条により本件を原審である宇都宮地方裁判所に差戻すものである。
(毛利野 平賀 加藤)