東京高等裁判所 昭和40年(ラ)448号・昭40年(ラ)446号 決定
記録を調査すると、本件競落不許可決定の基礎となつた昭和三九年六月五日午後二時の競売期日の公告には、競売不動産として、登記簿上の表示に従い、(一)(新潟県)東蒲原郡鹿瀬町大字日出谷字長走り甲八六二八番一、山林一五町九反、(二)同所同番二、保安林六町一反、(三)同所甲八六二九番三、保安林一町二反三畝一〇歩、(四)(同所甲の誤記と認める。)八六三一番イ、山林一〇三町一反二五歩と表示されている。ところで、本件競売不動産の評価を命ぜられた鑑定人遠藤竹次作成の昭和三五年一二月一日附不動産評価書によると、右(一)の山林の施業案の航空写真による算定面積は六五四町六反一畝であつて、登記簿上の表示面積の約四〇倍、(二)の保安林の右航空写真による算定面積は二〇三町六反六畝であつて、登記簿上の表示面積の約三三倍、(三)の保安林の右航空写真による算定面積は五二町四反八畝であつて、登記簿上の表示面積の約四三倍、(四)の山林の右航空写真による算定面積は八一二町七反六畝であつて、登記簿上の表示面積の約七・八倍(以上本件競売不動産の右航空写真による算定面積の合計面積一、七二三町五反一畝は登記簿上の表示面積の合計面積一二六町三反四畝五歩の約一三・六倍)であることが認められる。これによると、たとい右施業案の航空写真による算定面積が正確さに欠けるところがないとはいえないとしても、なお、本件競売不動産の登記簿上の表示面積、すなわち本件競売期日の公告に表示された面積は実際の面積との間に著しい相違があることを否定することができない。いつたい競売法第二九条第一項及び民事訴訟法第六五八条第一号が競売期日の公告に不動産の表示を要するとしたわけは、競売の目的である不動産を特定し、その同一性を知らせると同時に、他の公告記載事項と相まつて、できるだけその不動産の実情を明らかにし、これによつて、できるだけ多数の競買人を得、且つ競買人の競買申出にそごのないようにして、競売申立債権者、債務者、所有者、競買人その他の利害関係人の利益を保護しようとすることにあるのであるから、本件のように、競売不動産の登記簿上の表示面積が実際の面積と著しく相違するときは、競売期日の公告には登記簿上の表示面積を表示するだけでは足りず、これに併せて実際の面積を表示しなければ、前記公告の目的に添う不動産の表示としては、不適法といわなければならない。それならば、本件競売不動産の表示として登記簿上の表示面積のみを記載し実際の面積を併記しなかつた本件競売期日の公告は、競売法第二九条第一項に規定する民事訴訟法第六五八条第一号の記載がないことに帰し、違法であり、従つて本件競落は許すべからざるものと解するのが相当である。本件競落不許可決定及びこれに対する抗告人らの本件抗告はこの点に触れるところはないが、競売法第三二条第二項が準用する民事訴訟法第六七四条により、職権をもつて以上のように調査判断する。
(村上 吉田豊 柏原)