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東京高等裁判所 昭和40年(ラ)453号 決定 1965年12月06日

相手方 城南信用金庫

理由

本件抗告理由の要旨は、

相手方は抗告人に対する貸金及これに対する遅延損害金債権を申立債権として競売申立をなし競売開始決定がなされたところ、その後に至り相手方は抗告人に対し右競売申立債権と抗告人の相手方に対する預金及その利息債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をしたので競買申立債権は一部消滅したのに拘わらず、原裁判所はそのまま競売手続を進め、競落許可決定がされるに至つた。よつて抗告人は右決定に対し即時抗告をしたところ、右決定は超過競売になるとの理由で取消された。従つて原裁判所は抵当物件のうち残存債権額に見合う物件を競売の目的として特定した上で改めて競売手続を進めるべきであるに拘らず、更に次順位の抵当権者から競売申立があつたことを理由に抵当物件の全部についてそのまま手続を続行し、しかも新競売期日における抵当不動産の最低競売価額は鑑定人の当初の評価額によつてこれを定めるべきであるに拘らず、これを低減した価額を最低競売価額として新競売期日を定め更に競落を許すに至つたものである。原裁判所の競売手続には以上のような違法があるに拘らず抗告人の異議を却下した原決定は失当であるから、原決定を取消し、競売手続開始決定を取消す旨の裁判を求める。

というのである。

よつて按ずるに、本件競売手続開始決定がなされた後、相手方の申立債権が抗告人主張の通り減少したことは一件記録によつてこれを認めることができるが、抵当権の実行のための競売手続においては、抵当債権が残存する以上裁判所は申立により抵当不動産全部について競売手続開始決定をすることができるのであつて、債務者又は抵当不動産の所有者は競売開始決定に表示された債権額が現存の債権額と相違することを理由として右決定について不服を申立てることは許されないものである。また、超過競売を理由に抗告審において競落許可決定が取消されても、その後更に次順位抵当権者から競売申立がなされた結果超過競売となるおそれがなくなつた以上、競売裁判所が抵当不動産の全部について競落を許すことは毫も差支えなく、最低競売価額に関する抗告人の主張も独自の見解に出るものであつてこれまた採用の限りでない。しかのみならず、これらの点に関する抗告人の主張はいずれも競売手続開始後における手続の違法を主張するものであつて、競売手続開始決定に対する不服の事由として主張し得べき事項ではない。その他一件記録を精査しても本件競売手続開始決定には違法の点なく、抗告人の異議を却下した原決定は相当であつて本件抗告はその理由がないのでこれを棄却。

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