大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)107号 判決

一 特許庁における本件審査、審判手続の経緯、本件審決の理由の要旨についての請求原因第一、二項の事実は、当事者間に争がない。この争いがない事実と成立に争いのない甲第一号証および同第九、一〇号証によれば、本願意匠は、意匠に係る物品を「ちくわ」とし、別紙第一記載のとおり、長さの方向に中心部を通して断面正方形の透孔(貫通孔)を設け、断面円形で、両端面の角隅を削り丸味をつけた細長い筒状の形状に係り、その円筒状体の長さと直径との比が約六・六、右直径と断面正方形の一辺の長さとの比が約三・三であり、一方、本願意匠の出願前国内に頒布された意匠登録第八三五六七号の意匠公報所載の引用登録意匠は、意匠を現わすべき物品を「蒲鉾」とし、別紙第二記載のとおり、長さの方向に中心部を通して断面正方形の透孔(貫通孔)を設けた断面円形の筒状の形状に係り、その円筒状体の長さと直径との比が約一・八、右直径と断面正方形の一辺の長さとの比が約五・六であること(ただし、両意匠について、右のうち長さと直径との比がそれぞれ前示のとおりであることについては、当事者間に争いがない。)が認められる。

二 本件においては、本願意匠が引用登録意匠に類似するものであるかどうかが重要な争点である。

本願意匠に係る物品ちくわにおいて、その形状を、両端面の角隅部に丸味を持たせた細長い円筒状とすることが、本願意匠出願前よりきわめて一般公知に属することは、顕著な事実であり、原告も特に争わないところである。本願意匠を右一般公知の点を含め全体的に考察した場合、その形状においてとりわけ看者の視覚に訴え美感ないし趣味感を起こさせる点があるとすれば、それは、右円筒状体の長さ方向に中心部を通して断面正方形の透孔を設けた点にあるものと認められる。

一方、引用登録意匠は、長さ方向に中心部を通して断面正方形の透孔を設けた比較的太くて短い円筒状の蒲鉾の形状に係るものである。

してみれば、本願意匠は、「蒲鉾」について右引用意匠公報に記載された断面の意匠を、日常取引ないし生活面において蒲鉾ときわめて親近に取り扱われる「ちくわ」について、ほぼそのままに現わしたものに過ぎず、両者における透孔の一辺の長さと円筒状体の直径との比率の差異のごときも、看者に異なる美感ないし趣味感を起こさせるほどのものとは認められない。

原告は、引用登録意匠と本願意匠とにおける、円筒状体の長さと断面の直径との比率の相違について主張するが、本願意匠のそれが、「ちくわ」についてきわめて有り触れたものに外ならないことは、先に認定したところから明らかであるから、これを物品ちくわの意匠としてみる限り、これも審美上特に取り立てていうべき差異とは解されない。

したがつて、「ちくわ」についての本願意匠を引用登録意匠に対比するとき、右の有り触れた点は看者の美感ないし趣味感においては軽微な差異として後退し、結局、全体としてみて、これに新規な意匠も、創作として登録しうべき意匠も認めえないといわざるをえない。

三 右のとおりである以上、本願意匠を引用登録意匠に対比し意匠法第三条第一項第三号に該当するから登録すべきものでないとした本件審決は、相当であり、その取消を求める原告の本訴請求は、理由がないから、これを失当として棄却することとする。

〔編註〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

本願意匠

<省略>

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引用登録意匠(登録第八三五六七号)

<省略>

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