大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)117号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二、原告は、本件審決は、引用例における冷却ブロックと本件特許発明における当て型とを同視し、引用例においても溶融金属の支え受けの構成があると誤認し、これを前提として本件特許発明をもつて引用例から当事者の容易に推考しうべき程度のものであるとした点において判断を誤つたものである旨主張するが、この主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、引用例には、堅向自動溶接法及びその装置に関し、「溶接材とフラックスがどのように供給されるにかかわらず、溶接棒15と施行物間の電気アークの熱がプレート8と9との間の継手内に溶接材を溶融させ、成立に争いのない甲第二号証の第二図の18の個所に溶融材の攬錬物を作り出す。これらの攬錬物は持続したストリップ11によつてその背後でせき止められる。この攬錬物を含む溶融材は19(前掲第二図)の個所で高い熱伝導体の熱吸収ブロック20によつて熱を吸収され凝結する。」、「特別の形状をつけた熱吸収ブロック201には、プレート81と91の外面と触れ合う面があり、これにより溶融金属とスラッグの攬錬物18はプレート81と91の縁と熱吸収ブロック201の面の間で矩形状に包囲される」、「フラックス、スラッグの攬錬用を作り、スラグの析出温度で維持しながら、吸熱ブロックを溶接すべき継手に沿うて進行させる溶接方法でブロックのパドルの表面にスラグを凝固させる」旨の記載のあることは当事者間に争いなく、これらの記載と引用例の記載及び図示(とくに第一、二図)とを総合し、これと当事者間に争いのない本件特許発明の要旨とを比較考量すると、本件特許発明は、引用例記載の堅向自動溶接法及びその装置から、当業者の容易に推考しうる程度のものであると認めるを相当とし、他にこの認定を左右するに足る証拠はないから、この認定を前提として本件特許発明をもつて、旧特許法第一条の発明を構成しないとした本件審決の認定は相当であるといわざるをえない。

原告は、この点に関し、第二の四掲記のとおり、引用例の熱吸収ブロック(冷却ブロック)と本件特許発明の当て型とは構成及び作用効果において相違する旨主張する。しかして、本件特許公報及び引用例によれば、本件特許発明のものは耐火物の当て型であり、引用例のものは金属製のブロックであるから、物自体としては相違するが、本件特許発明の方法(本件特許発明は装置の発明ではなく、方法の発明である。)の実施の面において、両者の間に発明の目的を達成する一つの手段として実質的に格別の差異があるものは認めがたい。換言すれば、引用例の金属プロックを耐火物製の当て型に置きかえてみても、溶融金属(パドルがここにいう溶融金属に当たることはいうまでもない)の流出を防止しようとする目的、効果において格別顕著な差異を生ずるものと認めることはできない。本件特許発明の当て型は、耐火物製であるから、スラグダムがなくても溶融金属を支え受けることができることは見易いところであるが、それは当て型を耐火物製としたことによる当然の効果であり、引用例においてスラグダムがその作用効果を果しているのであり、この点について何らの証拠もない本件においては、両者のいずれも使用するかは、当事者にとつて、さまで困難なこととは認めえないのである。この意味において原告の前示主張は、本件特許発明が方法の発明であることを無視ないしは軽視し、当て型と吸収ブロックとの物としての差異のみを強調し、もつて、引用例から当業者の容易に推考しうるものとした本件審決を非難するものであり、もとより採用に値しない。

三、叙上のとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)

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