大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)14号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二、本件審決が、クロム酸と全触媒濃度比の比較において、引用例のそのを請求人である原告の釈明を基礎に「七七〜一八〇」の範囲と認定し、この認定を前提として本願発明と引用例とは、この点において、数値的に多少のずれがある程度で互に一致するとしたことは、当事者間に争いのないところであるが<書証>を総合すると、実験結果に基づき算定すると、引用例におけるクロム酸と全触媒濃度比は、電解温度華氏一一〇〜一三〇度の範囲内においては「16.2〜74.0」であることを認めうべく、他にこれを左右するに足る証拠は一つとして存在しないから、本件審決は右数値の認定を誤つたものというほかはなく、したがつて、この誤認された数値を前提とする本件審決の判断は、本願発明と引用例との比較を誤つたものというべく、違法として取り消さるべきである。右誤認に至つた事情に関する被告の主張(《編注》〔被告の答弁〕 被告指定代理人は、答弁として、次のとおり述べた。原告主張の事実中本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであることは認めるが、その余は否認する。本件審決の認定は正当であり、原告主張のような違法はない。引用例においてはクロム酸と全触媒濃度比は不明であり、それを確認することは実験機関をもたない特許庁の調査能力を越えるものであるから、抗告審判手続において、この点に関する釈明を求めたところ、原告主張のような数値範囲が提示されたので、本件審決は、この数値に基づいて判断したものであり、職権探知主義のもとにおいて、現状では可能な限りの手段を尽したうえで判断したものであるから、何ら違法の点はない筈である。原告が右釈明が誤りであることを立証するために提出した宣誓陳述書も、その計算の基礎となつている分析法は、各試料の量的関係、蒸溜の手段、滴定法の内容等において具体性に乏しく、原告の主張を裏づけるに足りない。)は、本件審決の判断が誤りである事実に、いささかの消長を及ぼしうべきものでないことは、多くの説明を要しないところであろう(あえて附言すれば、本件のような場合、如何にして誤認に至らないようにすべきかは検討を要する問題ではあるが、本件に関する限りにおいていえば、一半の責任は誤つた数値を提示した原告にあるとはいえ、クロム酸と全触媒濃度比の不明な引用例をもつて拒絶の理由としたところに、そもそもの問題があつたというほかないであろう)。

(むすび)

三、叙上のとおりであるから、その主張の点に事実誤認の違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものといわざるをえない。よつて、これを認容する。(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)

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