大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)141号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕引用例には、断面四角形の金属板、その上のゴム台、断面三角形でその頂角の部分が地面と接触するようにゴム台上に取付けられる着脱自在のグローサ(grouser)を備えたトラクターの無限軌道用の履帯が記載されていることが認められる。被告は、右のグローサは履板である金属板に取付けて摩擦力を増大させるための着脱自在の歯であつて履板ではない、と主張し、グローサが着脱自在の部品であることは右認定のとおりであるが、右甲号証によれば、グローサを金属板上のゴム台に取付けた場合は、グローサは金属板と一体をなして履板と同じ作用を営むことが明らかであるから、これを一体として履板と認めるのが相当である。

そこで、グローサを金属板上のゴム台に取付けた状態において引用例記載の履帯と本件考案の履帯とを比較すると、本件考案の履帯がその接地面の断面形状が正弦波曲線状の連続曲線であり、各履板間に離間部がないのに対し、引用例記載の履帯はその接地面の断面形状がジグザグ状不連続折線である点において両者が相違することは当事者間に争いがない。しかし、引用例記載のグローサもその先端はやや丸みを帯びていることが認められ、一方当事者間に争いがない本件考案の登録請求の範囲にいう正弦波曲線は数学的に厳密な意味ではなく、正弦波曲線に類似する曲線に過ぎないことは原告の自認するところであるから、右にいう正弦波曲線状の連続曲線とは、履帯の構造、機能に徴し、波の高さおよび幅が均一の波形曲線であると解するのが相当である。そうだとすると、グローサを取付けた状態における引用例記載の履帯の接地面の断面形状も、全体としてみれば波の高さおよび幅が均一の波形曲線であるといえるので(その曲線が連続か不連続かは履板間の離間部の有無によつて定まるから、後に検討する。)、接地面の断面形状を原告主張の正弦波曲線状とする履帯の構造は引用例に開示されていると認めるのが相当である。

次に、引用例記載の履帯の各履板間の離間部の長さは、履板の接地面の長さに比較して僅少であることが認められる。一方、原告の製造したブルドーザーのカタログ、原告の製造したブルドーザーの写真によれば、原告が製造販売している「湿地地ブルドーザー」の履帯も、接地面の断面形状は前示の波形曲線であるが、各履板間には右と同程度の離間部のあることが認められる。そして、原告は昭和三七年九月一五日頃被告の問合せに対し、石「湿地ブルドーザー」の履帯は本件考案の実施品であると回答したことが認められるので、特段の主張、立証のない本件では、右「湿地ブルドーザー」の履帯も原告主張の本件考案の作用効果と同一の作用効果を生ずるものと認めるのが相当である。そうだとすると、接地面の断面形状が前示の波形曲線である履帯において、履板間に履板の接地面の長さに比較して僅少の長さの離間部があつても、離間部の全くない場合と作用効果においては異らないから、離間部の有無は構造上の微差に過ぎず、本件考案の履帯は引用例記載の履帯と技術思想としては同一であるといわねばならない。

そうだとすると、本件考案は引用例に容易に実施し得る程度に記載されたものであるとした審決の認定には原告主張の違法はないから、被告主張の公知例との比較について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がないことが明らかである。

よつて、これを棄却する。

(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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