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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)47号 判決

一、原告ら主張一の登録第二一六、二一四号類似第一号の本件意匠の出願、登録の経過及び右意匠が原告両名の共有に属している事実、特許庁における本件無効審判手続の経過並びに同二の審決理由の要旨に関する事実は、当事者間に争いがない。

二、成立に争いなき甲第二号証によれば、本件意匠は、その願書の記載及びこれに添附された図面の記載によつて、意匠に係る物品を飲食用フオークとした、別紙本願意匠の図面に示すとおりの形状及び色彩の結合にあること、すなわち飲食用フオークにおいて、(一)その形状は、(1)側面から見ると、刺し部とこれに続く部分を合わせて全長の三分の一よりやや長い部分が弧状に曲り、その他の部分(柄の部分)は直線状になつていて、この直線状の部分の両側は末端部においてかすかに狭くなつている外は平行線をなしており、(2)正面及び背面から見ると、両側が、刺し部とこれに続く部分を合わせて刺し部の約二倍の長さの部分では直線状になつていて、双方間が刺し部の尖端に向つて漸次幅狭くなつており、右の刺し部の約二倍の長さのところから柄の基部に至る部分では漸次幅狭くしてくびらせ、柄部に接続されていて(以上の部分が前記の側面から見て弧状に曲つた全長の三分の一よりやや長い部分に当る。)、これに続く部分(柄の部分)では、そのやや刺し部寄りの中央部分が、ゆるやかな曲線形をもつてやや幅広く、この部分を中心に刺し部寄り及び柄の末端の両方に向けて直線状の両側線をもつて漸次幅狭くなり、柄の末端部はやや尖つた形の丸形となつており、(3)柄の部分の面を見ると、その正面及び背面が、全長にわたり漸次中くぼみとなつており、(二)次にその色彩は、柄部の末端のやや長さのある部分(甲第二号証所載の図面によれば柄部の約七分の一の長さに表わされている)を全面にわたり濃黒色にしたものであることが認められる。

三、次に成立に争いなき甲第四号証(乙第一号証)によれば、引用意匠は、その願書の記載及びこれに添附された図面(右図面において、柄の末端部を濃黒色にしてある以外の部分は、すべて銀色に色彩を附してあることは、当事者双方の主張の趣旨の一致するところである。)の記載によつて意匠に係る物品を飲食用フオークとした、別紙引用意匠の図面(柄の末端部の濃黒色以外の部分は全部銀色である。)に示すとおりの形状及び色彩の結合にあること、すなわち飲食用フオークにおいて、(一)その形状は、(1)側面から見ると、刺し部とこれに続く部分を合わせて全長の三分の一よりやや長い部分が弧状に曲り、その他の部分(柄の部分)は直線状になつていて、この部分の両側は、その中央部(柄の中央部)を中心としてゆるやかな中太状をなし、刺し部寄りの末端においては薄くせばめられた形になつており、(2)正面及び背面から見ると、両側が、刺し部とこれに続く部分を合わせて刺し部の約二倍の長さの部分(この部分が前記の側面から見て弧状に曲つた全長の三分の一よりやや長い部分に当る。)は弧状となつて柄部に接続されており、これに続く部分(柄の部分)では、中央部を中心にして、両側のゆるやかな曲線により中太形になつていて、柄の末端部は角形となつており、(3)柄の部分の面を見ると、その表側の面は、全長にわたりわずかに中高の曲面状となつており、背面は、ほぼ扁平状であり、わずかにふくらみをもつているようにもみえるが、少なくとも表側の面のようにはつきりと認められる程度のものではなく(別紙引用意匠の図面のうち「イ―イ線断面図」参照)、(二)次にその色彩は、柄部の末端のやや長さのある部分を全面にわたり濃黒色にし、その他の部分はすべて銀色にしたものであること(右濃黒色の部分の柄部全体の長さに対する比率は、本件意匠のフオークの柄部におけると大体同じ程度である)が認められる。

四、そこで右両意匠を比較するに、

(一) 両者とも飲食用フオークに関するものであつて、柄の部分の先端のやや長さのある部分を全面にわたり濃黒色に彩色している点で、その意匠上の構想を一にするものであるが、

(二) その形状を仔細に検討すれば、刺し部とこれに続く部分においては、本件意匠ではその両側縁が一部に弧状の箇所を含んだ直線状になつているのに対し、引用意匠ではその両側縁が全体として弧状に曲つた形になつており、また右の部分全体の中で刺し部が占める長さの割合において、前者は後者より小であり、次に柄の部分においては、前者は表面、裏面ともに、やや刺し部寄りの中央部分がゆるやかな曲線形をもつてやや幅広く、この部分から刺し部寄り及び柄の末端部の両方に向けて両側が直線状に狭まつた形をなし、かつ右の両面とも全長にわたり中くぼみになつていて、末端はやや尖つた形の丸形になつており、そしてこの表面、裏面間の厚さは全長にわたつて同厚であるのに対し、後者は表面、裏面ともに、中央部を中心にゆるやかな曲線による中太状となり、かつその両面とも全長にわたりわずかに中高の曲面状となつていて、(もつとも裏面は前記のとおりであるが、)末端は角形となつており、この表面、裏面間の厚さは、中央部においてやや厚く、この部分を中心に両方に向けて次第に薄く、刺し部側の基部では相当に薄いものとなつている等の諸点において差異があることが認められる(なお色彩において、本件意匠は、柄の末端部を濃黒色としただけであるのに対し、引用意匠は、この部分を濃黒色にするとともに、その他の部分を全部銀色としていることは前記認定のとおりである。)。

よつて右両者の一致点及び相違点から考え、意匠としての類否を判断するのに、両者が意匠として看者の美的感覚に訴え、一見して強い印象を与えるのは、飲食用フオークにおいて柄の末端をやや長さのある濃黒色部にした点にあるものと認めざるを得ないのであつて、なるほど両者を細部にわたつて観察すれば、その形状において前記の如く、刺し部から柄の基部までにおける両側縁の形状、刺し部の長さ比、柄部の表裏面並びに末端部の形状、その表裏面間の厚みの形状等に幾つかの差異があげられないではないにしても、両者のこれらの形状はそのいずれもこの種物品としては格別印象的でない、普通の類型の範囲を出ないもので、両者の柄は、その形状は全体的に見ていわゆる普通の柄として共通したものであつて、右の各差異は、前記柄の末端部に濃黒色部を設けた点の共通性がきわだつているのと対照して、格別に特徴的な印象を与えることのないいわゆる大同小異の程度を出ないものと認めるの外はない。なお、本件意匠が柄の末端部を濃黒色としただけであるのに対し、引用意匠は同一部分を同様にするとともに、他の部分を銀色にしていること前記のとおりであるけれども、本件意匠が右黒色にした部分以外の部分を銀色以外に色彩を施しているものでない以上、本件意匠も右黒色にした部分以外を銀色にしたものをも含むものというべきであり、(本件意匠を実施する場合に、右濃黒色の部分以外を銀色としたとしても、それが本件意匠の実施品でないとすることのできないことは明らかである。)従つてこの点に関し色彩上両者間に差異はないとなすべきであるし、また、飲食用フオークという物品の性質上、銀色はその普通のありふれた色彩というべく、従つて引用意匠における右の色彩は未だ本件意匠との格別の差異をもたらすものとはなり得ないと見るのが相当である。結局本件意匠は前記のように柄の末端部を濃黒色にした色彩において看者の美的感覚に訴える点(この点に意匠構成上の支配的要素が存するものとみるべきである)において引用意匠に酷似しており、全体的にみても両意匠は相類似するものといわねばならない。

そして、引用意匠が本件意匠の登録前である昭和三六年六月一六日登録された被告の権利に属するものであることは、前記甲第四号証によつて明らかであるから、本件意匠は自己の登録意匠にのみ類似するものということはできず、その登録は意匠法第一〇条第一項の規定に違反してなされたものとして無効とさるべきであり、同趣旨に出た審決の判断は相当である。

五、(一) 原告らは、被告の意匠の類否の比較は、図面に現わされたものが実体として現わされた場合における具体的な外観によつてなさるべきである旨の主張に対し、意匠においては図面が基本的なものであり、そしてこの図面を基本として本件意匠と引用意匠とを比較すると、柄の部分の形状においてその列挙する如き幾多の相違点が存するのであり、かように両者は柄の形状が根本的に相異するから類似するものではないという。

ところで、意匠の内容、範囲の確定ひいてまた意匠の比較について相互に主張するところがあるが、被告も図面に現わされたところが実体に現わされた外観によるべき旨主張するだけで、もとより図面の軽視などいうのではなく、原告らも図面が基本をなす旨強調するだけで、図面そのものが意匠であるなどというのではなく、両者の主張は帰するところ表現上の差にすぎないものと見られるところ、この点については要するに、図面に基づいて、すなわち図面に現わされたところが実体に現わされる外観によつて、決せらるべきものとなすべきである。そして、まさにかような理解に立つて両意匠を見るとき、その柄の部分の形状はそれぞれに前記認定のとおりに認められ、そして原告らが両意匠の柄の形状の差異として列挙するところもおおむねこれを肯認し得ること前記のとおりであるにしても、そのいずれの差異も、いわば対比的観察をまつて始めて感得される程度の微差にすぎないものといつても過言ではなく、両者の柄のいずれの部分の形状もこの種物品としては格別に美的印象をひくものはないのであつて、両者は全体的に見て、看者の美的感覚を支配するのは柄の末端部を濃黒色にした特色にある点において共通していると見らるべきこと前記のとおりである。

(二)次に原告らは、本件意匠における如き洋食器関係の意匠にあつては、類似の幅を狭く見て、僅かの―特に柄の部分の形状ないしは模様における、―差があつても、登録されるというのが既往の実状であり、このことを示す近似したものの登録例は別紙意匠表記載のとおり多数存するのであつて、かような点から見ても、引用意匠と柄の形状を著しく異にする本件意匠は、これに類似しないとせらるべきが相当であるという。

ところで成立に争いなき甲第一一号証の一ないし三以下第三三号証の一ないし三によれば、別紙意匠表記載の多数の登録例の存することは認められないではないが、しかしこれら他の意匠に関する特許庁の既往の審査例が当然に本件における判断を左右すべきものでないのは勿論であるし、これら各審査例は、それら各意匠にそれぞれに存する特定、独自の形状、色彩等の具体的事情を全体的に勘案、考慮してなされたものであつて、直ちに本件に援用さるべき余地の存しないものというべきであり、従つてこれら登録例の存することは、未だ本件における両意匠を非類似となすべき正当な根拠とはなり得ないものというべきである。

六、以上のとおりであつて、審決の違法を主張してその取消を求める原告らの本訴請求は理由がない。

〔編註〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

(一) 本件意匠の図面

<省略>

<省略>

(二) 引用意匠の図面

<省略>

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