大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)66号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

と第一公知例には長網抄紙機の無端状網を構成する材料として合成物質を用いることが本願出願前公知であることが、第二公知例にはベルトが長さ方向に伸びることのないようにする目的で、ベルトの長さ方向に真直な緯糸を使用し、経糸は屈曲させて継目(重合接合部)のない無端帯とすることが本願出願前公知であることが、それぞれ示されている事実、合成物質から成る織物の形状を熱処理によつて安定させることは本願出願前から普通に行なわれていた慣用手段である事実、合成繊維製有孔織布の経糸及び緯糸の目滑りを熱処理によつて防止し均一な有効性と寸法との安定性を保持することは、本願出願前から行なわれていたことである事実とを比較考量すると、本願発明は、これらの公知ないし慣用の各技術から当業者の容易に推考しうる程度のものと認めるのを相当とし、これを左右するに足る証拠資料はない。原告は、本願発明のもたらすその主張の諸効果は、本願発明の各構成要素の総合により初めて期待しうるものであり、これら公知ないしは慣用の技術手段の断片的寄せ集めによつてはこれを挙げることができないものであるから、本願発明はこれらの技術から容易に推考しうるものとしたことは誤りである旨主張するが、原告の主張する各構成要素の総合的効果なるものも、結局は、前掲公知ないし慣用の各技術を結合して合成物質製無端状スクリーンとした場合、それぞれの技術が本来的に有していた効果を具現するものに他ならず、これをもつて、本願発明のもたらす新規な効果ということはできないから、原告主張のような効果のあることをもつて、右認定を覆えすことはできない。また、原告は、第二公知例は、その目的、組織において本願発明のものと相違する旨主張するが、とくにその「発明ノ詳細ナル説明」中の「該真直糸条ハ表裏共ニ交叉セル横糸条ニヨリ被覆セラレアリテ毫モ表面ニ露出セサルヲ以テ調車と接触セス従テ磨滅損耗ヲ受クル事ナキヲ以テ耐久力大ニシテ」との記載によれば、第二公知例なおいても、その緯糸をベルトの長さ方向に真直なものとしたのは、同方向へのベルトの伸長の防止のほかに、本願発明におけると同様に、(ベルトの)磨滅損耗の防止をもその目的としていることが認められるから、両者は、その目的を共通にするものというべきであり、その組織についても、布目の粗密、あるいはミシン縫の有無などは、それぞれの目的性質に応じて当業者の容易に選択しうるところと認められるから、右主張も採用に値しない。さらに、また、各公知例に示されたそれぞれの発明としての全体の技術と本願発明との差異のごときは、本件審決の認定の当否を判断する根拠となりうべきものでないことは言をまたないところである。けだし、本件審決は、各公知例に開示されたある特定の(部分的)技術をとつて、その論拠としているものであり、各公知例に示された発明全体と本願発明との比較をしているものではないからである。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴講求は、理由がないものというほかはない。

よつて、これを棄却する。

(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)

(編注 本願発明の要旨

予め定めた幅及び間隔を置いて織られた経糸及び篩様の排水性を与える緯糸及びそのベルトの長さを通じて均質性を有する無端織ベルトの形における荒目織り織物から成り、その緯糸はそのベルトの周囲の長さ方向に真直ぐに延ばされ、その経糸はその緯糸と交叉して曲げられ横方向に延ばされ、その織られた糸の全部が合成物質から成り、その織物が熱処理によつてそれらの経糸が曲がつた形に置かれてその形状に安定化され、かつ、それらは交叉点において緯糸との相対的移動に対して固定される製紙及び類似の機械のためのフアードリニヤークロス。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!