東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)86号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本件審決は、本件特許発明を構成する個々の技術が本件特許の出願前公知であつたとしても、これにより明細書記載の効果の実現ができるものであり、しかも、布帛に防水性皮膜を形成せしめる方法として実用上の利点があり、有用であるから、本件特許を無効にすることはできないとしているが、これは、本件特許発明の奏する効果につき判断を誤つたものといわざるをえない。けだし、本件特許発明の奏する効果なるものは、のちに説示するとおり、とくに本件特許発明の構成がもたらす顕著な効果といいがたいからである。以下、これを詳説する。
本件特許出願前次の事実が公知であつたことは、被告の認めて争わないところである。
(1) 二〇%以上の糸格子間隔面積率を有する布地が存在したこと、
(2) カレンダー法により生成されつつある熱可塑性樹脂皮膜の片面に布を重ねて接着する方法
(3) 布地に同様に皮膜を両面貼りすること、
(4) ドクター装置による片面塗布の方法
しかして、右(1)から(4)の各事実が本件特許出願前公知であつた事実と<書証>並びに本件特許発明の要旨と対比すると、本件特許発明の構成要件である各技術は「中心布の組織目を通じて表裏の合成樹脂皮膜を相互に融着一体化させる」ことをも含めて(したがつて、これが被告の主張するように本件特許発明の構成要件とみるべきか、原告の主張するように、本件特許発明の実施に伴う効果であるかどうかは、本件では問題とする余地はない。)、すべて本件特許出願前公知のもの、あるいは、<書証>の本件特許出願前公知の各刊行物に容易に実施することをうる程度に記載されていたものであることを認めることができ、これを左右するに足る証拠資料はない。被告は、本件特許発明は、たとえ個々の構成要件が公知であつても、このような構成をとることにより被告主張の顕著な効果を奏するものである旨主張するが、この主張も採用することはできない。すなわち、被告の主張する(1)から(8)の効果なるものは、本件特許出願前公知の前掲布地又は各技術、とくに糸格子間隔面積率約二〇%以上に織成した布地を中心布地に用い、その両面にカレンダー法により生成されつつある熱可塑性樹脂皮膜となるべきものを圧接することにより当然生ずべき効果にすぎないことは、各公知事項と右効果とを比照することにより明らかなところであるのみならず、<書証>によれば、本件特許出願当時、本件特許発明による製品と同一の物(車両用幌)がすでに公知であつたことが認められるから、本件特許発明の製品の諸性質も、とくに本件特許発明が初めてもたらした顕著な性質ないし効果とみることはできない。しかも本件特許発明が他に特段の効果をもたらすことについては、何らの主張も立証もないのであるから、その効果の点に着目して、たとえ、それを構成する各技術が公知であつても、本件特許を無効にすることはできないとした本件審決は、その判断を誤つた違法があるものといわざるをえない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものといわなければならない。よつて、これを認容する。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)