東京高等裁判所 昭和40年(行コ)50号 判決 1967年12月27日
控訴人 農林大臣
訴訟代理人 板井俊雄 外五名
被控訴人 内山行道
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 <省略>
理由
一、本件第四次的請求に関する当裁判所の判断は、つぎに訂正附加するほか原判決理由(原判決一九枚目裏一〇行目より二八枚目裏四行目まで)と同一であるからこれを引用する。
原判決二四枚目裏五行目より二五枚目裏八行目までをつぎのとおりに改める。
「農地法第七八条第一項により農林大臣が管理する土地等は、自作農の創設または土地の農業上の利用の増進という公共の目的のために自作農として農業に精進する見込がある者等に売り渡すことを予定されていたもので、その意味においての一種の公共用財産たる性格をもち、農林大臣はこれを農地行政の責任者たる立場において管理しているものであるから、国の普通財産の管理者とは著しくその性格を異にしているものといわなければならない。農地法第八〇条第二項による売払いは、農林大臣が、かかる農地行政の責任者たる立場において、その管理する前記の農地等を右のような公共目的に供しないことを相当とするかどうかを判断し、公共目的に供しないことを相当とするという認定に達したときに売払をするのであるから、農林大臣のなす右売払行為の中には、買収という行政処分によつて農地等に付与された右のごとき内容の公共用財産たる性格を行政上の個別的具体的判断に基づいて右財産から剥奪(用途廃止)する作用が含まれていることを否定し得ない。従つて、かかる行為は、国の機関が私法上の財産権の主体たる国の機関としてこれを処分する場合とは著しくその趣を異にし、あくまでも行政権の行使機関としての立場においてなされる行政処分たる性質をもつものと解すべきである。」
二、以上の理由により、被控訴人の本件第四次的請求は正当であるからこれを認容すべく、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきである(本件第一次ないし第三次的請求については、被控訴人より不服の申立がないから、判断を加えない)。よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 川添利起 坂井芳雄 蕪山厳)