東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2798号 判決
(一)、控訴人は、本件交換契約解除の合意は農地法第三条第四項によつて無効であると主張する。農地の売買契約その他農地の所有権移転を目的とする契約の合意解除により農地の所有権が元の所有者に復帰するためにも、その復帰については農地法の適用があるものと解すべきである。けだし、解除は当事者に原状回復義務を負わせるものであつて、その実質において新たな権利変動を生ぜさせると異るところはないからである。もつとも、法定の事由による解除の場合には、法律の定めるところによつて解除権が発生するものであるから、法定解除による農地所有権の
原状回復については同法の適用はないと解さなければならない。そうでないと、当事者は法律上認められた解除権の行使を封ぜられると同一に帰するからである。しかし、合意解除はこれと同一に論ずることはできない。合意解除は当事者の完全な自由意思によるものであつて権利にもとづくものではないから、農地所有権の移転を目的とする契約の合意解除についてその効力を認め農地法の適用がないと解しては、実質上農地所有権の移転を当事者の自由意思に放任すると異らないこととなるからである。故に、若し右合意解除が農地法で定められた知事の許可の有無にかかわらずこれをしようとするものであれば、右農地法の規定によつて無効となるのを免れないであろう。しかし、契約は当事者の企図するところを合理的に探究しなるべく有効になるように解釈すべきであるから、本件交換契約の合意解除は農地に関する部分については知事の許可を受けることを当然の条件、いわゆる法定条件としたものと解すべきであり、果して然らばこのような契約が有効なことはいうまでもない。
(長谷部 鈴木信 舘)