東京高等裁判所 昭和41年(ネ)472号 判決
控訴人らは、本件売買契約は通謀して取締法規に違反したもので公序良俗に反し、また、名板貸禁止に反する取引だから無効であり、したがつて連帯保証契約も無効になり、控訴人らには責任がないと主張するのでこの点を判断する。
前示のとおり、被控訴会社と被告会社の酒類の取引は、酒類の製造販売の免許を持つ被控訴会社が、その免許を持つていない被告会社をして卸販売免許のある被控訴会社中部出張所名義を使用して酒類の販売業を営むこと、すなわち、実質上免許を受けずに酒類の販売業を営むことを知りながら酒類の販売をした取引にかかるものである。したがつて控訴人ら主張のとおり、右は免許を受けずには酒類の販売業が出来ないことを両当事者が知つて、免許のある被控訴会社中部出張所名義を被告会社に使用させて酒類を販売させるべく酒類を被告会社に販売したものである。このような無免許で酒類を販売して利益を得る目的で酒類を買入れる場合は、まだ酒類を販売しなくても無免許で酒類営業をしたものであるから、被告会社の酒類の買入行為は酒税法の免許を受けない酒類販売業に関する罰則にふれることになるかも知れない。
被控訴会社は被告会社への酒類の販売は酒税法に反しないというがこの主張は当らない。
しかしながら酒税法に免許を受けずに酒類の販売業をすることができないというのは、酒税という国家の重要財源を確保するため国家の強力な管理監督が必要ということと、同業者の乱立を妨止して関係業者の企業経営の万全を図りたいということからなされる制度であつて、もともと本件の如く免許のある者から免許のない者への売買行為そのものは違法ではなく、それが無免許販売業となる時これを防止するため罰則が適用されるのである。したがつて右の場合取引の効力までを否定する必要はなくたとい取引の当事者が右取締法規に違反することを知つていても、右法規の目的が前示のとおりである以上その取引の税法上の効力まで否定する必要はない。このことは控訴人ら主張のように、本件が名板貸しになるとしても、酒税法には鉱業法のようにこれを禁止する趣旨の規定はないから、被控訴会社が免許を受けた中部出張所名義を被告会社に使用を許しても、被告会社の営業が無免許営業となることがあるのは格別、直ちに右取引の効力まで否定する根拠とはなし難い。したがつて、控訴人らの本件売買取引が無効であることを前提とする主張は採用しない。
(鈴木信 岡田辰 館)