東京高等裁判所 昭和41年(ネ)703号 判決
おもうに、民事調停の申立書には紛争の要点を記載すべきであるがその記載事項が性質上相手方の名誉を傷けるような事柄に亘る場合には申立人は充分事実を調査し、いやしくも、真実に反する事項を記載することがないように注意すべき義務があるというべきところ、以上認定の事実によれば被控訴人は竹の伐採及び掘つた泥土の処理についての責任者を十分調査することなく、これを控訴人の所為にあたるものと速断し、真実に反する事実、とくに伐竹については被控訴人においてこれを持去つた旨あたかも被控訴人がこれを窃取したかのような事実を記載させる前示調停申立書を裁判所に提出したのであつて、被控訴人はこの点において少くとも重大な過失あるものとしてその責を免れることはできない。
しかるところ、控訴人が農地約二町七反、山林約三反を所有する六〇余歳の老人で、旧公津村村会議員、成田市市議会議員を歴任し、当時成田市青少年問題協議会委員、国民年金指導委員、成田市西中学校PTA会長、郷社琴平神社総代等の名誉職に就任していたものであり、また被控訴人が農地約二町、山林約五反を所有して農業を営み部落において相当の地位にあるものであることは当事者間に争いがないので、控訴人は調停申立書に記載された事柄の性質上被控訴人の右調停申立及び期日における言動によつて名誉を傷けられ精神上の菩痛を蒙つた事実が推測できる。従つて被控訴人は、控訴人に対し慰藉料を支払うべき義務があるものといわなければならない
(仁分 石田実 右田)