東京高等裁判所 昭和41年(ネ)913号 判決
控訴人がもと被控訴人ら主張の如き旧建物を所有し、被控訴人らに対し右建物のうちそれぞれ同人ら主張の一部をその主張の如き賃料で期間の定めなく賃貸し、被控訴人川田はその賃借部分で八百屋業を、被控訴人橋若はその賃借部分で理髪業を営んでいたこと、控訴人が被控訴人ら主張の如き理由で右賃貸借契約の解約を申し入れたが、被控訴人らが応じなかつたところから、控訴人が被控訴人らに対し家屋明渡等請求の訴(横浜地方裁判所川崎支部昭和三五年(ワ)第一八七号事件)を提起し、右訴訟の係属中に被控訴人ら主張の如き裁判上の和解が成立したこと、控訴人が右和解にもとづいて被控訴人らに対し旧建物からの退去を申し入れたので、被控訴人らは昭和三八年一〇月二〇日それぞれの賃借部分から退去してこれを明渡したことは当事者間に争いがなく、原審並びに当審における控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は被控訴人らから旧建物の明渡を受けた後、直ちに右建物を取りこわしたが、その敷地跡に土盛りをしただけで本件和解に定める明渡期日から三ケ月すなわち昭和三九年一月一九日までに新建物の建築を完成せず、右敷地には現在控訴人の仕事小屋が設置されているほか、同人の子久作のための自動車置場として使用されていることを認めることができる。
そうすると被控訴人らに延滞賃料の不払があることを理由とする控訴人の本件和解契約解除の意思表示はその効力を生ずるに由なく(本件和解においては延滞賃料の支払に関する約定が存しない点からしても)該債務の不履行を理由として和解契約を解除しえないことが明らかである)控訴人は新建物の建築をしないことにつき本件和解契約上の債務不履行の責を免れえないものといわねばならない。
(仁分 池田 石田実)