大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(ラ)118号 決定

抗告人は昭和二九年頃から「茂」という名を通称として使用し現在に至り、それ以外の名は誰も知らない有様であつて、このまま戸籍上の名「英一郎」を称することは、社会生活上、著しい支障を伴なうので、これを「茂」と変更することの許可審判を求めたが、東京家庭裁判所は、これを申立権の濫用であるとて、たやすく、却下した。しかし、抗告人は、もと、「公胤」という名であつたが、同裁判所において、昭和三七年一〇月二日これを前記「英一郎」と変更することの許可審判を受け(同庁昭和三七年(家)第九五〇六号)届出たものであるが、その際、当初、「茂」と変更することの申立に及んだところ、元首相吉田茂と同姓同名であるとて、「受付」られず、やむなく「意に反し」右のとおり「英一郎」と変更することの申立をなし許可された次第でもあり、このたびの申立をもつて、申立権を濫用するものといわれる筋合はない。本件抗告をなすゆえんである。というにある。

しかしながら、抗告人が、前記の頃より、そのような通称を用いていたとしても、「英一郎」を「茂」と、名の変更をしなければ、社会生活上、格別に、著しい支障があるというような事情はこれを確認する資料がないから、右名の変更につき正当な事由があるものとはなし難い。

なお抗告人は、さきに現在の名「英一郎」に名の変更申立をなした際の事情を云々して、本件名の変更申立を正当なるものと弁疏しようとするもののようであるが、ともかく、自ら右のように現在の名「英一郎」に名の変更申立に及び、そのとおりの許可審判を受けその旨届出をなしたことは、その主張自体より明らかなところであるから、これをもつて、今日、右のように名を改めたことを意に反したなどといい、ひいて、本件名の変更申立を正当なものと主張しようとするのは、もとより、当らないものといわなければならない。そして抗告人は前記名の変更許可を受けたのち、原審判(理由部分)記載のように、一旦、本件と同様名の変更申立をなして不許(却下)の審判を受けたにも拘らず、格別事情の変化もないのに、屡次にわたり同種の申立を繰返えしているものであることは記録上明らかで、それはとりもなおさず、申立権を濫用するものともいわなければならない。

(福島 武藤 三和田)

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