東京高等裁判所 昭和41年(ラ)460号 決定
競売法第二三条が競落期日までに限つて最高価競買申込人の同意を条件として申立の取下を認めた趣旨は競落許可決定により受ける競落人の利益が一方的な取下により喪われることを防止しようとするにあるから競落許可決定の確定後は取下が許されないことは当然である。取下の理由には抗告人の主張する通り債権者が弁済を受けた場合、債権を放棄した場合もあるべきは勿論であるが理由の如何によつては当事者の一方的な取下により競売手続を終了せしめうるものとすれば既に競落手続の段階に及び将来競落物件の所有権を取得すべき競落人の地位は頗る不安定のものとなり牽いては競売制度不信の惧さえあるから法が競落期日までは競落人の同意を必要とし以後は取下を禁じたのは当然である。
しかし乍ら競売手続も債権満足の手段である以上競落許可決定の確定後でも未だ代金の納入がなく以後の手続が未了の間は競売手続は完結していないのであるからその間に弁済が行われ、債権の放棄があつたような場合競売の基本たる債権が消滅しているのに競売手続を続行し物件所有者の権利を喪わしめることは衡平の理念に悖るというべく裁判所は競売手続開始決定を取消し競売手続を終了させることができると解するのが相当である。
この場合競売手続開始決定の取消は裁判所が債権消滅の事実を認定して行うのであるから、偶々申立の取下と同様の効果を生じたとしても、抗告人が主張するように当事者のなす一方的な取下と同一に解しても競落期日以後或は競落許可確定後は競売手続開始決定を取消すことができない、というのは当らない。
(岸上 小野沢 野田)