東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)150号 判決
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〔判決理由〕(本件審決の違法事由の有無)
二 原告は、その主張の点において本件審決は判断を誤つた違法があるというけれども、その主張の理由のないことは以下説明するとおりである。
(本願発明と引用例との差異について)
(一) 引用例に本願発明の第二の線刻印に相当するものがないことは原告主張のとおりであるが、本件審決も、両者のこの点の差異を認めた上で、本願のような、引き裂き貼片を開口部の一部のみに設け、残余の部分の容器壁にスコアラインを設けて、接着線から漸次スコアラインへ移行させて容器を開口させることは、参照例にもみられるとおりきわめて周知の技術であることを認定し、結局、本願発明に第二の線刻印を設けて原告主張のように「貼片の形にかかわらず任意の形状、大きさの開口部を設けることを可能にした」等の作用効果をもたらしたにしても、それは、単に、引用例に右の周知技術を適用した結果にすぎず、そこに格別の発明思想は存在しないことを判示した趣旨であることは、前記争いのない本件審決の理由の要点に照らし明らかであり、審決のこの認定判断は、本願発明、引用例および参照例に関する各特許公報に徴し首肯するに足るものである。
したがつて、本件審決が、本願発明と引用例との間に第二の線刻印の有無について差異があることを看過したという原告の主張は、失当である。
(本願発明と参照例との差異について)
(二) 本件審決が参照例を引用した趣旨は前項に説明したとおりであり、本願も参照例も、食料品等の密閉金属容器の開口手段に関し、開口部の一部の容器壁上に引裂き貼片を溶接し、残余の部分の容器壁上にプレスによりスコアラインを形成しておき、貼片を引き上げて容器壁から引き離したとき、容器金属が最初貼片の溶接線に沿つて切断され、その後金属の引裂きあるいは切断が前記スコアラインに沿つて続いて行き、その結果、貼片の大きさとは関係なく望みの大きさおよび形状の開口部を容器壁に生ぜしめる方法である点で全く合致することは、明らかであるから、たとえ両者の間に、容器金属の材質の相違にもとづき、貼片と容器壁との溶接方法および開缶キイの要否の点で原告主張のような差異があつても、参照例を引用して本願発明の前記の技術思想がすでに周知に属することを認定判断した本件審決になんらの誤りはなく、両者の技術分野の相違をいう原告の主張は採用できない。
(本願発明の要旨について)
(三) 原告が本願発明の要旨に含まれる二要件として主張する事項のうち、「貼片は小さく」という点は、貼片が開口部の一部分のみを蔽つていることを意味するものと解されるところ、この点については、本件審決もこれを要旨として認定した上でそれが周知の技術に属することを判断したのであるから、審決が要旨の認定を誤つたとする原告の主張は理由がなく、また、二要件のうちの右以外の事項は、本願明細書の「特許請求の範囲」の項に記載がなく、本願明細書の全体の記載からも、そのような事項が黙示的な要件とされていると解すべき根拠を見出すことができない(明細書の「発明の詳細なる説明」の項中に右の事項に関連する記載部分があるが、これらはいずれも本願発明の一実施態様についての説明であつて、本願発明の内容自体を限定する趣旨のものとは解されない。)。したがつて、この点で本件審決に要旨認定の誤りがあるという原告の主張も採用することができない。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして本件審決の取消しを求める原告の請求は、失当として棄却する。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)