東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)48号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二、原告は、本件審決が本願商標「チバ」の文字をもつて、漢字の「千葉」に通ずるものとし、漢字の「千葉」は社会通念上氏姓としての「千葉」を直感すると認定し、ひいて本願商標をその指定する商品に使用したとしても、取引者、需要者は他の千葉なる氏姓を有する同種商品とその出所を区別することができないものであると断定した点において、その判断を誤つた違法がある旨主張するが、原告の上記主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、本願商標「チバ」は、片仮名文字の「チ」と「バ」の結合からなり、「チバ」の称呼を生ずるものであり、この称呼から、一般に氏姓としての「千葉」(あるいは、県名としての「千葉」)を連想すると解するのが社会通念に照らし相当であるところ、一方、「千葉」なる氏姓は、東京二十三区五十音別電話番号簿下巻に十欄にわたり掲載せられており、また、新村出編広辞苑によれば、「ちば(千葉)」の項に「姓氏の一」との解説が記載せられており、これらの事実に徴すれば、「千葉」なる氏姓は、わが国において、きわめて数多く存在する一般的な氏であることが明らかであり、また、本願商標「チバ」は、その構成自体に何ら特別のものはないから、本願商標は、商標法第三条第四号に規定する商標であると認めるを相当とする。なお、原告は別紙記載の商標登録例の存在を主張するが、原告挙示にかかる商標登録例があるとしても、商標の登録適格性の有無は、各商標につき個別的に判断すべき性質のものであるから、本願商標につき前記のとおり認定しうる以上、右商標登録例の存在の有無にかかわらず、本願商標が登録適格を欠くことは、多言を要しない。
原告は、日本人の氏姓は最も一般的に漢字で表わされるのが普通であり、漢字で表わされてはじめて氏姓であることが認識されるものであるから、片仮名をもつて表わされた本願商標はすでに固有名詞としての機能を失つたものである旨主張するが、日本人の氏姓も、日常これを表現する手段として、漢字、片仮名、平仮名、ローマ字等種々な文字を使用することは顕著な事実であるから、原告の右主張は理由がない。
原告は、本願商標「チバ」は、その指定商品である染料、顔料については、「ciba」に通じるものとして認識されているという社会的事実がありこれがありふれた氏姓「千葉」に通じるという社会通念は本件の場合全くあてはまらない旨主張するが、仮に原告主張のような社会的事実なるものが存在したとしても、そのことは前認定にいささかの消長を及ぼしうべきものではない。けだし、そのような事実の有無と一般取引者間において、「チバ」がありふれた氏姓と認識されるということとは全く別個のことに属するからである。
(むすび)
三、以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。
よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 武居二郎 布井要太郎)