大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(う)2740号 判決

被告人 飛田信一 外一名

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

論旨は、要するに、原判決は被告人飛田信一、同斉藤久が金品強取を共謀し、被告人斉藤が相手方に暴行を加えてその反抗を抑圧し、被告人飛田が相手方のハンドバツクから現金在中のがま口を強取した事実を認定した。しかし、ハンドバツクは初め被告人斉藤が単独で相手方からひつたくつて窃取したもので、被告人飛田はその中からがま口を取得したのであるから、賍物の事後処分をしただけであつて、金品強取の罪責を負うべきものではない。仮りに、初め被告人斉藤がハンドバツクを窃取したものでないとしても、被告人飛田は相手方の承諾、少くともその暗黙の了解に基いて任意にがま口の交付を受けたものであるのみならず、同被告人には強取の意思がなく、被告人斉藤もその時点においては強姦の意志だけで相手方に暴行を加えていたのであるから、共謀による強盗ということはなく、従つて、被告人飛田は窃盗若しくは恐喝の罪責を負うにとどまるのである。それ故、原判示強盗強姦罪成立の前提となる強盗の事実はなく、この点原判決には事実を誤認し、ひいては法令の適用を誤つた違法があり、右の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れないというのである。

よつて、記録を調査して案ずるに、原判決挙示の証拠によると原判決が摘示する被告人ら両名の共謀による強盗強姦の事実を肯認するに十分である。所論は強盗の点を争うが、右証拠によつてその点の経過を見ると、原判示赤津美智子を強姦しようと共謀した被告人斉藤が、先ず同女を原判示大豆畑に連れ込み、その場に仰向けに押し倒し、馬乗りとなつて同女の両手を押えつけたので、同女が強姦の被害を免れる方便として「お金をあげるから帰して」と哀願し、これを耳にした被告人飛田が咄嗟に同女から金品を強取する意思を生じ、同女が既に反抗を抑圧されているのに乗じて、同女に対し、「金はどこにあるんだ、出せ」といつたところ、同女が「ハンドバツクにある」と答えた。しかして、ハンドバツクは初め被告人斉藤が同女を大豆畑に連れ込んだ際付近に落したのを被告人飛田が拾つて持つていたので、同被告人が更に「金を出してくれ」といつたところ、同女が「両手を押えられてできない」と答えたので、被告人斉藤に対し手を放してやるようにいい、被告人斉藤も右の経過を見聞していて被告人飛田の金品強取の犯意を知り、金品を盗ることには極めて関心が薄かつたもののこれに同調し、被告人飛田のいうところに従つて同女の右手を放してやり、片方でハンドバツクから金品を取り出させようとしたのであるが、同女が「片手ではとれない」といつたので、結局、被告人飛田がハンドバツク内を探し原判示のがま口を取り出し、在中の現金を同被告人のズボンのポケツトに入れ、被告人斉藤も右がま口を取り出したことまでは現認しなかつたが、被告人飛田がハンドバツクから金員を盗つたものと思つていたことが認められる。以上の事実に徴すると、被告人ら両名が金品強取の犯意を生じ、互いにその意思を通じて、被告人斉藤の強姦を目的とする反抗抑圧行為を利用し、これを手段として、被告人飛田が金品を強取し、共謀による強盗の目的を遂げたものであつて、原判示強盗強姦罪の前提となる強盗の犯行の存在することは明らかである。なお、原判決の強盗の点に関する事実摘示には、前認定の経過と異りいささか正確を欠くところがあるが、右は未だ判決に影響を及ぼさないものと認める。それ故、原判決には所論のような事実の誤認、法令の適用の誤りはない。論旨は理由がない。

(松本 山岸 石渡)

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