東京高等裁判所 昭和42年(ネ)1090号 判決
一、被控訴人と大木顕との間に家屋等の賃貸借契約ならびに営業および商号譲渡契約が締結されたが、その後右賃貸借契約が合意解除され、大木が被控訴人に対して右家屋を明け渡し、右営業および商号を返還したこと、控訴人が大木に対して準消費貸借契約に基づく債務の不履行を理由として大木の被控訴人に対する営業および商号譲渡代金返還請求権につき債権差押および取立命令を得、これが大木および被控訴人に送達されたことについては、原判決がその理由中一および二に掲げたところ(一の(四)の税金滞納による差押および支払に関する部分を除く)と同一であるから、これを引用する(ただし、「甘糟勉」とあるのを「甘粕勉」と訂正する。)。
二、被控訴人の大木に対する本件営業および商号譲渡代金返還請求権の弁済期は、前記賃貸借ならびに譲渡契約の約旨によれば、右賃貸借契約が合意解除され、賃借物件が被控訴人に返還された昭和三九年七月二六日であることが明らかであるところ、控訴人は右請求権につき同年六月二五日にすでに差押および取立命令を得て、同月二七日これが被控訴人に送達されているのであり、したがつて、このような賃貸物件の返還を停止条件として生ずる債権につき条件成就前に発せられた債権差押および取立命令の効力が先ず問題となるが、原審証人大木善恵および同大木顕の各証言によれば、右差押当時大木は本件家屋において半ば閉店状態で辛うじて営業を続けていて、早晩被控訴人に対して賃借家屋を明け渡して営業および商号を返還することが予定されていたことが認められるのであつて、このような事実関係のもとでは、賃借物件の返還によつて生ずる本件営業および商号譲渡代金返還請求権の差押は有効であるとともに、右差押と同時になされた本件取立命令も、賃借物件の返還により条件が成就したと認められる昭和三九年七月二六日にはその効力を生ずるにいたつたものと解すべきである。
(三淵 園部 森)