大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)2013号 判決

〔証拠〕を綜合すれば、被控訴人野中は本件土地を工場及び住宅の敷地として使用する目的で借受けたものでその地上に前記(一)の建物を建築し個人経営のコンクリート製造販売を業としていたが、昭和二十五年一月二十八日被控訴有限会社を設立して右会社のため右建物を現物出資して所有権を移転したこと、その後昭和三十一年七月有限会社は株式会社に組織変更して被控訴株式会社を設立し、その代表取締役には被控訴人野中が、また被控訴有限会社解散後の清算人も同被控訴人がいずれも就任したこと、被控訴株式会社も被控訴有限会社当時と同じく前記(一)(二)(三)の建物並びにその敷地である本件土地を使用して同じくコンクリート製造販売業を営んでいることが認められ右認定に反する証拠はない。

なるほど〔証拠〕を綜合すれば、被控訴人等主張の事実(原判決書四枚裏十二行目から同五枚裏六行目まで)が認められるので、個人企業を会社企業に転換しても経営の実態にはその前後を通じて実質的な変動はないものとみられないわけではないが、いやしくも会社が設立された以上別個独立の人格を有するに至つたのであるから、前段認定の被控訴有限会社が被控訴人野中からの現物出資によりその地上の建物を自ら所有し使用収益する関係はその賃借物たる本件土地の転借又は賃借権の譲受のいずれかに該当するというべく、被控訴人等主張の如く、被控訴有限会社ないし被控訴株式会社が被控訴人野中の賃借権の範囲内で使用が許されているにすぎないものと解することはできない。

右の如く被控訴有限会社ないし被控訴株式会社の本件土地の使用関係が賃借人の変更によるものか単に転貸にすぎないか明確でない本件の場合にあつては、賃貸人との権利関係に紛肴を生ずることを否定し得ないことに鑑み、賃借人は賃貸人の承諾を要すべきものであるに拘らず、敢えて賃貸人に承諾を求めることをなさず(この点、賃貸人が不当に承諾を拒めば現在は借地法第九条の二の救済がある)法律上の見地を無視し只単に社会経済上土地利用の実態関係が同一であるから信頼関係を破るものではないとして民法第六百十二条の適用を排除しても差支えないとする考え方は採るを得ない。

(毛利野 石田哲 加藤)

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