大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)2385号 判決

本件自動車は訴外関東自動車販売株式会社(以下関東自動車という)が昭和三九年一月前後東京都所在の日野自動車販売株式会社から、販売の目的をもつて、代金一八五万円を現金で支払つて買い受けた同会社の所有のものであるが、英国製の高級車で珍らしい車であつたので、右関東自動車の代表取締役張南洙において本件自動車の車両名義を同会社名義にしておくと、自分の家族や会社のセールス係の者が乗り廻して車をきずつけるおそれがあつたため、知人であり、右会社設立の際役員の数を揃えるため監査役としてその名を借りていた被控訴人に対し右の訳を話したうえ、本件自動車の車両名義を被控訴人名義にすることだけの承諾を得、同車についての自動車登録原簿への登録や自賠法第五条による責任保険契約締結の手続も右張南洙の側で被控訴人名義で行つたこと及び右張南洙はその後同年七月中旬ごろ本件自動車をオイル交換と部品取替えのため有限会社上林商店(以下上林商店という)に預けておいたところ、同月三〇日上林商店の役員である原審相被告上林明信が関東自動車にはもとより上林商店にも無断で私用のため勝手に乗り出し運転中、本件事故を起したことが認められ、前記甲号証を除いて右認定を動かすに足る証拠はなく、そうだとすれば本件事故当時本件自動車は前記関東自動車販売株式会社の所有にかかり、被控訴人はたんに登録上の名義人であつたにすぎないものというべきである。(中略)控訴人らは被控訴人は道路運送車両法第四条による自動車登録原簿への登録及び自賠法第五条による責任保険の契約締結に際し被控訴人名義の使用を許諾した点において、自賠法第三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」に準じる者としてその責任を負うべき旨、仮りにしからずとしても被控訴人において自動車登録原簿の登録名義に自己の名義の使用を許諾した以上、将来起りうべき交通事故について損害賠償の責に任ずることを外部に表示したものとみられるから、禁反言の法理や信義誠実の原則からいつて被控訴人は右責任を免れることはできない旨主張する。しかし前認定の事実に徴すれば、被控訴人は前記張南洙から頼まれてたんに好意的に車両名義に自己の名義を使用することを許諾しただけ(この場合右自動車登録原簿の登録名義や自賠保険契約名義が被控訴人名義となることは右許諾による当然の帰結である)であつて、自から本件自動車についてその運行を支配するとか、その運行により利益を得るような関係にはなかつたことを窺うに十分であるから、直接には自賠法第三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にあたらないものというべきである。もつともかように車両名義に自己の名義を使用することを許諾したものは、それによつて外部に対し当該自動車に関する限り自己がその所有者であり、所有者としてその自動車の運行について生ずる責任を引受ける旨表示したものといいうるから、たんに名義上の保有者であつて、実質上の保有者が他にあるとの一事によつてその責任を免れうべきでないことは自賠法全体の精神、禁反言の法理及び信義誠実の原則からこれを肯定すべきことは控訴人ら所論のとおりであり、その意味においてその真実の保有者が責任を負うべき限度においては名義人自らもその責任を負うべきものと解することができる。しかし前認定の事実によると本件自動車は関東自動車がオイル交換と部品取替えのため上林商店に預けたところ、同商店の役員である原審相被告上林明信が、関東自動車にはもとより上林商店にも無断で私用のため勝手に乗り出し、本件事故にいたらしめた場合にかかり、その運行は関東自動車の意思にもとずくものではなく、その意味で自己のための運行と解することを得ないことは明らかであり、かようなオイル交換等に預けることが当然乗用を伴うものともいいえないから本件運行はその行為の外形上も関東自動車のためにするものともいいえないのであつて、結局自賠法第三条によつてこれに責任を帰せしめることは困難であり、その他これに責任を帰せしめうべき場合であることを認めることはできない。従つて名義人としての立場においても被控訴人がその責任を負うべき場合ではないといわざるをえない。

(浅沼 上野 渡部)

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