東京高等裁判所 昭和42年(ネ)2741号 判決 1970年2月19日
控訴人
有田二郎
外一名
代理人
人村下武司
外二名
被控訴人
三菱電機株式会社
代理人
山根篤
外五名
主文
本件控訴は、棄却する。
訴訟費用は、控訴人らの負担とする。
事実
理由
<前略>(被控訴人製品が本件登録実用新案の技術的範囲に属するかどうかについて)
二前掲当事者間に争いのない事実によれば、被控訴人製品は、本件登録実用新案の構成要件の一である「ジャック部25の着脱により交直の変換がなされ得べく交直切換用接点10の可動部分を外部電源受電用プラグ02に設け」るという構造を欠き、したがつて、この構成要件のもたらす、交直変換の操作の単純化という作用効果を挙げえないものであることが明らかであるから、他の部分において本件登録実用新案の構成要件に相応する構造を有しているとしても(このことは当事者に争いはない)、本件登録実用新案の技術的範囲に属するものということはできない。
この点に関し、控訴人らは、本件登録実用新案の中心的課題は交直両用電気かみそりを提供することであるから、その目的及び作用効果にして同一である被控訴人製品は、該目的を実現する手段において異なるところがあるとしても、なお本件登録実用新案の技術的範囲に属するものである旨主張するが、考案の同一性は、単にその目的、すなわち、その考案の解決課題本件(登録実用新案においては交直両用電気かみそり)、ないしは、その目的に奉仕するための概括的作用効果のみによつて決すべきではなく、ある考案がその解決課題解明のために如何なる具体的技術手段(本件登録実用新案にいおては、ジャック26部の着脱という構成により交直の変換ができるように交直切換用接点10をその可動部分12を外部電源受電用プラグに設けるという手段)を用いたかという考案の構成及びそのもたらす効果(実用新案法第五条第三、四項参照)を考慮すべきものであることは、いまさら多くの説明を要しないところであるから、これと見異を解にする控訴人らの主張は到底採用しがたい。
また、控訴人らは、被控訴人製品の交直切換装置に関する構造は、本件登録実用新案におけるるそれの単なる設計変更にすぎない旨主張するが、ジャックの着脱により交直の変換を行い、これにより交直切換の操作の単純化という効果をもたらす構成を手動式切換によつて交直の変換を行なう構造とすることをもつて、単なる設計変更と見ることは、いわゆる設計変更の概念を不当に拡張せんとするものであり、もとより妥当な見解ということはできない。
さらに、控訴人らは、被控訴人製品は本件登録実用新案を利用する関係にあるものである旨主張するが、被控訴人製品における交直切換装置が本件登録実用新案におけるそれをそのまま利用したものというべきものでないことは、両者の構造に徴しまことに明白なところであるから、控訴人らの右主張もまた当を得ないものというほかはない。
(むすび)
三叔上のとおりであるから、被控訴人製品が本件登録実用新案の技術的範囲に属することを前提とする控訴人らの本訴請求は、他の点について判断するまでもなく、理由がないものといわななければならない。
よつて、本件控訴は、これを棄却する
(服部高顕 三宅正雄 石沢健)