東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)118号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本件審決は、本願考案をもつて、引用例に開示された技術内容から、当業者がきわめて容易に考案できる程度のものである、としているが、この判断は、以下に説示するとおり、はなはだしく失当であり、本件審決は、違法として取消を免れない。すなわち、
(一) <略>
(二) 本願考案と引用例とを対比するに、
(1) 引用例においては全体をポリ塩化ビニールをもつて構成しているに対し、本願考案においては、台板1は、弾力性ある合成樹脂製であり、凹陥部2の周壁が柔軟質の合成樹脂製袋体となつている点
(2) 引用例においては、その凹みの周壁が貨車の積荷により加えられる水平圧力に耐えうる硬さと弾力性を備えている(引用例のトレーの壁は、紙製のカップを圧迫し、果物を傷つける、貨車積に普通に存在する水平方向からの力に拮抗できる十分な硬さと弾性(spring)とを有する)に対し、本願考案においては、凹陥部の周壁を柔軟質の合成樹脂製袋体としている点(硬度及び弾性について特別の考慮がされていない。)
において、少なくとも、(周壁の条溝(しわは、縮みによつて生ずるものを指称するのであるから、本件審決が引用例に見る条溝ないし条線をしわと表現したことは適切でない。)の問題は、しばらくおく。)相違していることが明らかである。この点に関し本件審決は、一般の合成樹脂シートにおいて硬質のものと軟質のものとがあり、その硬軟度等は配合成分により種々変化することが周知であることを挙げ、本願考案は、引用例の材質を単に転換したにすぎないものであるというような説示をしているが、仮にそのような事項が周知であつたとしても、そのことから直ちに材質転換は容易であると論断することは、本願考案において、引用例におけるような、凹みの周壁に「水平方向からの力に耐えうる(十分な)硬さと弾力」を持たしめるという技術的思想を欠き、単に柔軟質の合成樹脂製としているにすぎない点(なお、本願考案も、引用例と同様、運搬中に被収容物が互いに接触して損傷しないようにすることを目的とするものではあるが、本願考案においては、被収容物が水平方向の力に対し保護されるのは、弾力性のある台板に設けられた袋体が柔軟質の合成樹脂からなり、かつ、その周壁に襞を有する構成としたことによるものであることは、明らかである。)を全く看過誤認するものといわざるをえない。換言すれば、本願考案をもつて、引用例及び合成樹脂シートの硬軟等に関する本件審決の指摘する周知技術から、前掲(1)及び(2)の差異にかかわらず、当業者が必要に応じてきわめて容易になしえたところであるとすることは、全く論理的説得力を欠くものというほかはなく、被告が本訴において主張するところも、上に指摘した本件審決の理由の不備を補いうるものでないことは、本件審決の理由及び被告の主張自体に徴し、きわめて明らかなところである。
以上説示したとおりであるから、本件審決は、その指摘する第二の相違点に関する判断の適否を検討するまでもなく、すでに叙上の点において判断を誤つたものであり、これを前提とする本件審決の判断は、違法たる免れない。
(むすび)
三 叙上のとおり、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、結局、理由があるもののということができるから、これを認容する。
(三宅正雄 武居二郎 友納治夫)