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東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)145号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無)

二 原告は、本件審決がその主張の二点において認定判断を誤つた違法がある旨主張するが、いずれも理由がない。すなわち、

(一) 本願発明における擦落片と引用例記載のものにおける摺擦子とが、その構造及び機能の点において、全く異なるものということは相当でない。原告は、本願発明における擦落片が比較的硬い材料で可撓性をもたないようにつくられた棒状のものであるというけれども、前掲当事者間に争いのない本願発明の要旨中に、そのような擦落片の構造に関する限定は無いばかりでなく、本願明細書によると、円体が鋼製の場合には、擦落片を比較的軟質の物質、例えばゴム様物質でつくるのを相当とする旨の実施態様の記載があることが認められ、このような場合、擦落片が円体と接触する際に、その接触すべき線部分が二つの互いに鋭角をなして延びる面で形成された縁であることに徴すると、その先端部がある程度の撓曲性を有すべきことは、当該技術分野において、経験則上明らかなことであるといわなければならない。したがつて、引用例記載のものにおける摺擦子が弾性材料でつくられた可撓性の舌状のものであつて、ローラーの回転方向に彎曲するものであることは、明らかであるが、本願発明における擦落片と引用例のものにおける摺擦子とは、その構造上可撓性を有するか否かは、程度の相違であつて、本質的なものではないといわざるをえない。そして、本願発明における擦落片も引用例のものにおける摺擦子も、ともに、ローラーに纒着する繊維屑を集束離間して擦落片(摺擦子)の後方に剥落させるものである点において、共通のものがあることを認めることができるから、右両者は機能の面においても本質的な相違はないものというべく、かつ、その作用角度を常に一定に保ちうるか否かは、本願発明の擦落片が程度の相違はあるにせよ可撓性を有しうるものである以上、可撓性の有無に基づいてこれを論ずることは、無用のことに属するわけである。したがつて、本願発明の擦落片と引用例のものにおける摺擦子とは、構造及び機能において本質的な相違があるものとはいい難く、これを比較の対象として本願発明の特許要件を判断した本件審決に、原告主張のような違法はないといわざるをえない。

(二) 本願明細書中に、擦落片の縁と円体との接触線を含む水平面と、擦落片の上手側にある縁の面とのなす角度を二〇度ないし五〇度とした構成により奏すべき効果について特段の記載はなく、かえつて、実施例の説明として、利用しうる右角度の範囲は、繊維の物質と擦落片の物質とに左右される摩擦係数を考慮して、二五度ないし四五度である旨の記載のあることを認めることがである。そして、<書証>によると、所掲の実験条件の下で所掲の結果をえられたことは認めることができるけれども、これらをもつて、本願発明の要旨に包含されるすべての技術的条件の場合を通じて、右の二〇度ないし五〇度の角度範囲が特段に顕著な擦落効果を奏する部分であることを証するには、十分でないといわざるをえない。他に、右の角度限定により予測しえない程度の特段の効果があること、特に、二〇度及び五〇度の臨界的意義については、これを認めるに足る証拠がないから、右の角度限定により格別顕著な効果を奏するものとは認め難いとした本件審決の判断に、原告主張のような誤りはないというべきである。

(むすび)

三 以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由なしとして棄却すべきものと……する。(服部高顕 石沢健 奈良次郎)

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