大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)146号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決が、本願発明と引用例(その記載のある特許明細書が本願出願前国内に頒布された刊行物であることは、原告の争わないところである。)との間の技術内容の本質的相違を看過し、両者がエネルギー損失及び流体可変分配作用の点で格別な差異なしとした結果、両者をもつて同一のものとしたことは、判断を誤つたものである旨主張する。しかし、原告が右主張の前提とするところの、本願発明の流体可変分配機構は、入力流体を二路に分流する流体通路の開口断面積の和が常に一定となるように、可変比的に分配制御されるような構成のものであるということは、前掲当事者間に争いのない本願発明の要旨に含まれない事項であるのみならず、本願明細書中の特許請求の範囲の項にもその旨の記載はなく、単に、本願発明の実施例を示す添付図面第二図及び発明の詳細な説明の項における流体可変分配機構の説明としての「第二図に見る如く、全体的には絞り効果を与えるものではなく、単に可変比的に分配する機構」という記載があるにすぎず、これらをもつてしても、流体可変分配機構が原告主張のような構成のものであることを適確に開示したものとはいいがたい(本願において、右のような実施例の一図面及びその説明的記載のみを根拠として、その発明の要旨中、流体可変分配機構が原告主張のような限定的要件を含むものとすることはできないことは、いうまでもないところである。)。そして、引用例において、弁体90を流体流入管側におくときは(弁体90を流入側におくか流出側におくかが単なる設計変更にすぎないことは、原告の争わないところである。)、一定断面を有する流入路が二路に分岐され、分岐された二路は、弁体90の移動によつて、一方が減少すれば他方が拡大するように差動的に分配制御される構成のものであることが明らかであるから、これと当事者間に争いのない本願発明の要旨に基づく流体可変分配機構の構成とを対比検討すると、その間に格別の差異はないことが認められ、また、引用例は、弁体90の移動によつて流体の流動が絞塞される旨説明して、この機構を絞塞手段と称していることを認めることはできるけれども、前記認定のとおり、入力流体を差動的に分配制御する機能を有するものである以上、機能の点においても、本願発明における流体可変分配機構とは異別のものと解すべき根拠はないといわざるをえない。

次に、原告主張のエネルギー損失の有無の点について検討すると、原告は、本願発明のものは流体の可変分配に際し制動によるエネルギー損失がない旨主張するけれども、この主張は、本願発明における流体可変分配機構は流体通路の開口断面積の和が常に一定となるように構成されていることを前提としたものであることが、原告の主張自体で明らかであるところ、右前提の採り得ないものであること、既に判断したとおりであるから、エネルギー損失の有無を根拠として、本願発明と引用例とが技術思想を全く異にするものであるとする原告の主張は失当である。そして、前認定の構成における本願発明の流体可変分配機構にあつても、流体の流路を可変に分配するものである以上、流路断面の変化に伴つてエネルギーの損失を生ずべきことは、経験則上明らかなところであるから、この点においても本願発明と引用例との間に格別の差異はないものというべきである。

したがつて、本願発明と引用例との間に、エネルギー損失及び流体可変分配作用の点で格別の差異がなく、両者は結局同一のものであるとした本件審決に、原告主張のような判断を誤つた違法はない、といわざるをえない。

(むすび)

三 以上のとおりであるから、本件審決の取消を求める原告の本訴請求を、理由なしと認めて棄却する。

(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)

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