大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(う)77号 判決

被告人 清原欣司

〔抄 録〕

論旨は、原判示罪となるべき事実(一)の事件については、未だ犯人が判明していなかつたのに、被告人が自ら進んで捜査官に自供したものであるから、刑法第四二条第一項にいわゆる自首をした場合に該当し、法律上の減軽をなすべきであるのに拘らず、原判決が同条項を適用しなかつたのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りを犯している、というのである。

そこで記録について調査すると、被告人の司法警察員に対する供述調書中(記録第三八一丁以下)の「今から六年前に私が踏んだ古いヤマがありますから、それを引当りによつて確認したので、お話しする」旨及び原判示罪となるべき事実(一)の自白の記載、並びに原審第四回公判調書中(同第一四丁裏)の「今度の亀有署での取調の際、何かもうないかと言われて、昭和四二年一一月一三日付起訴状の1の事実(即ち原判示罪となるべき事実(一))を言つたので、それを取り上げたものと思う」旨の被告人の供述記載等に徴すれば、原判示罪となるべき事実については所論のように犯人不明であつたのに被告人がこれを自供したものであることが窺われるけれども、記録上明らかなように被告人は右自供の当時身柄を勾留されて他の犯罪事実につき捜査官憲の取調を受けていたものであり、このように既に自己の犯罪事実につき捜査官憲の取調を受けている者がその取調中ほかに犯した罪はないかとの趣旨の問を受けて更に他の犯罪事実を自供したとしても、刑法第四二条第一項にいわゆる自首には該当しないものというべく、従つて原判決が本件につき右自首減軽の規定を適用しなかつたのは固より正当であつて、所論のように法令適用の誤りがあるものということはできない。(なお、仮りにこれが自首に該当するとしても、自首にかかる事犯〔原判示罪となるべき事実(一)〕の態様並びに自首が前示のような状況下になされたことにかんがみ、右自首にかかる罪につき裁量による刑の減軽をなすのが相当であるとは認められないので、これによつてみても原判決が自首軽減の規定を適用しなかつたことをもつて法令の適用を誤つたものということはできない。)本論旨は理由がない。

(遠藤 吉田 大平)

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