大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)213号 判決

一、問題は右後遺症補償なるものが本訴請求にかかる本件事故による受傷に対する慰藉料と別個のものであるかどうかにある。前掲甲第二、三号証及び同第五号証、当審での被控訴本人尋問の結果に本件弁論の全趣旨をあわせれば、被控訴人は本件事故による受傷の治癒後前示認定のように顔面に傷痕を残し、多少醜状を呈するかの趣があるが、その労働能力を喪失若しくは減少し、現実に従来どおり工員として稼働するにつき支障を来したような事実はないことが認められるのであり、後遺症補償として支払われた金八〇万円は女性である被控訴人の顔面に醜状を残したことの精神的苦痛に対する慰藉料をも含めて支払われたに外ならないものと解するのが相当である。

二、しかし、各種の損害とその数額は、当事者の算出若しくは自動車損害賠償責任保険査定事務所の査定によつて確定されるものではなく、裁判における認定を俟つてはじめて具体的に確定されるものであり、裁判確定前における当事者の算出若しくは査定事務所の査定は被害者の救済のため加害者の損害賠償義務に基く賠償金につき一応の支払をなすのを目的とするものというべく、当事者若しくは保険会社による支払がなされたときは、その支払を一括してこれによつて被害者がその有する損害賠償請求権につきいかほどの満足を得たかという観点からのみこれを扱い、個々の損害に対する弁済充当のごとき関係はこれを考慮する必要はないものと考える。

(浅賀 岡本 鈴木)

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