東京高等裁判所 昭和43年(ラ)766号 決定
よつて按ずるに、本件の債務名義たる公正証書には、その第七条に「前条により本契約が解除された時に売主の損害を賠償するため第六条の約束手形は売主の権利に帰属するものとし、買主及び各連帯保証人は売主に対し同約束手形の振出人及び裏書人としての責任を負うものとする。」との記載が存し、その文言に従えば、同条は、同第四条及び第六条との関連から、契約解除の場合における売主に対する損害賠償として買主及びその連帯保証人に合計金一、二〇〇万円の約束手形金の支払義務を定めたものと解せられるところ、原審は右債務名義の内容の判断に立入り、本件公正証書は民事訴訟法第五五九条第三号所定の金額の一定性の要件を欠くゆえ本件強制競売の申立は不適法であると論断したのであるが、そもそも執行裁判所としては執行開始の要件として適法な債務名義の存在を確認すれば足り、進んで債務名義の内容に立入つてその有効、無効を判断すべきではなく、債務名義の効力を争つて強制執行を阻止しようとする者は別途に請求異議訴訟等の手段に訴えて救済を求めるほかないのであるから、前記のとおり文面上民事訴訟法第五五九条第三号所定の金額の一定性の要件を欠くことのない本件公正証書につき、原審がことさらその内容に立入つて判断し、右要件を欠くとして、本件強制競売の申立を却下したことは違法である。
(古山 川添万 右田)