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東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)113号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本願明細書の特許請求の範囲の記載は、[ボイラー内部に付着しているスケールを強酸を用いる酸洗によつて除去する際に酸液中に腐食防止剤の他にチオ尿素を添加し、金属銅をチオ尿素によつて酸液中に溶出させることを特徴とするスケール中の金属銅および酸化銅を除去する方法」であり、本願明細書全体を通じ、酸液に添加するチオ尿素の濃度に限定がある旨の明示の記載はないことが認められる。原告は本願出願当時の当業者の技術常識と本願明細書の「発明の詳細な説明」の記載を斟酌すれば、前記「金属銅をチオ尿素によつて酸液中に溶出させることを特徴とする」という文言は、チオ尿素の濃度を1.5%以上に限定したものと解すべきである、と主張する。しかし、仮に本願出願当時原告主張の技術常識が存在したとしても本願明細書には右技術常識の記載はもとより、本願発明がこれを前提としてボイラースケール中の金属銅が1.5mg/cm2以上の場合に限られる旨の記載がないことが認められるし、チオ尿素の濃度が1.5%未満でも金属銅が酸液中に溶出することは当事者間に争いがないから、原告の主張は採用することができない。

のみならず被告主張のとおり、本願明細書の特許請求の範囲は、もとチオ尿素の濃度を「0.3%以上」と限定していたのをその後の明細書の補正により右限定を削除したものであることは当事者間に争いがない。原告は、右補正は原告の錯誤によるものであると主張するが、原告が右補正当時特許庁に対しその理由を被告主張のとおり――<編注>添加の限界量は存しない旨――説明していたことは原告の明らかに争わないところであるあるから、右補正は原告の軽卒または勘違いによるものでないことが明らかである。そして、<書証>によれば、本願特許請求の範囲の前記「金属銅をチオ尿素によつて酸液中に溶出させることを特徴とする」という文言は、更にその後の明細書の補正によつて挿入されたものであるが、右補正の理由を誤明した特許異議答弁書には、原告が本訴において主張するような趣旨で右文言を挿入する旨の記載は全くないことが認められる。右の経過からみれば、本願発明で使用する酸液に添加すべきチオ尿素には原告主張の濃度限定はないことが明らかであるといわねばならない。

三、そうであるとすれば、チオ尿素の濃度を1.5%以上とする限定が本願発明の要旨に含まれることを前提とする原告の主張は理由のないことが明らかである。<中略>

四、よつて、本件審決には原告主張の違法はないから原告の請求を棄却……する。(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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