東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)146号 判決
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〔判決理由〕二、そこで審決取消事由の有無について判断する。
本件審決は、本願考案と引用例とを対比し、その間に相違点があるとしながらも、いずれも、実質的には相違はないか、または引用例の考案に周知の技術手段を用いることにより当業者が容易に考案することができるものであると認定しているが、当裁判所は、この認定は誤りであり、本件審決は取消を免れないものであると認める。その理由は、以下にのべるとおりである。
1 本願考案についての昭和四〇年八月一七日付手続補正書および引用例によると、本願考案においては、円筒状管を接続金具本体の一側方に突設し、芯管は円筒状管の中心側に本体と一体にその一側に突設し補助管が嵌合され、これと密接している円筒状管を求心方向に圧搾してホースを円筒状管と芯管とにより挾着する構成をとるものであるのに対し、引用例にあつては、挾持環は筒状接手本体の一側方に設け、筒体を挾持環の中心側に筒状本体とは別体にその一側に設けており、締付体における螺旋内周面を接手本体の螺旋外周部側に螺合させることにより、パイプの一端外面が挾持環を介して締付体のテーパー内面をもつて徐々に締付けられるようにした構成であることは、審決の認定するとおりであることが認められる。
2 ところで、本願考案は叙上の構成に加えて円筒状管に透孔を設ける構成によつて、接続に当つては、芯管と円筒状管との間にゴムホースを嵌挿し、補助管および円筒状管を外周より押圧してこれを塑性変形させ、円筒状管と芯管との間にホースを挾着することにより接続の目的を達するから、接続に手数を要せず、また補助管および円筒状管を外周から圧搾してその透孔内に確実にゴムホースをその固有の弾性力を利用して膨出させて喰入らせることにより、強固にホースを接続固定することができ、漏液、漏気のおそれがないようにする作用効果をあげうるものであることを認めることができる。これに対し、引用例のものはプラスチックスパイプ専用の接手であつて、叙上の構成に加え鈑製挾持環に多数の小孔を穿設した構成をとることにより、接続に当つては、筒体のテーパー外周面に所要のプラスチックスパイプの一端を一旦溶融させ、該パイプの外周面に、その面に内周面が対応し、かつ、一周部を切開した挾持環を抱合させる一方、該環の外周面に対応するテーパー内周面を下半部に、かつ、上半部に接手本体の螺旋外周部に対応する螺旋内周面を形成した締付体における螺旋内周面を接手本体の螺旋外周部側に螺合して締付体のテーパー内周面をもつて徐々に締付けてゆくことにより、パイプの一端を挾持環の内周面と筒体のテーパー外周面とで強固に挾持し、よつてパイプと接手本体とを完全に、しかも水密的に接続保持せしめうべく、さらに挾持環の下周部に穿設した多数の小孔内へ、締付体の締付時において溶融されてまだ冷却しないパイプの一端部の一外周部分が自然に膨張突入し、その冷却後突起となることにより、パイプに少々の引張加が加えられて該パイプの一端部は筒体のテーパー外周面と挾持環の内周面間より脱出するようなことも全くなく、しかも上記の鋏持環は締付体と同一物質の金属鈑製であるため挾持環の外周面と締付体のテーパー内周面との摩擦は他の環状パッキング下面と筒体上面および筒体のテーパー外周面と挾持環の内周面との摩擦の大きさに比して著しく小さく、したがつて締付体の回転力によつて挾持環と共にパイプが回転することを防止しえ、締付時においてもパイプをねじるようなことのないという作用効果をあげるものであることを認めることができる。叙上によると、本願考案と引用例との間に、とくに、本願考案にあつては、接続金具本体とゴムホースとの接続を、円筒状管に透孔を設け、補助管および円筒状管を外周より圧搾して円筒状管と芯管との間に嵌挿したゴムホースの外周部をこの透孔内に喰入らしめることにより強固にしているのに対し、引用例のものにあつては、鈑製挾持環に小孔を設け、これを筒体のテーパー外周面に嵌合させたプラスチックス製パイプの外周部を溶融した個所に圧着し、前記小孔内に溶融したパイプの一部を膨張突入させて冷却後突起となるようにして、この突起部と前記小孔との緊密な嵌合によりパイプの脱出を防止するようにしている点において、その構造および作用効果に相違するところがあるといわなければならない。
3 審決は、右にのべた本願考案と引用例との構成上の相違点を含め、その指摘する相違点は、いずれも実質的に相違というほどでないか、または当業者が周知技術の利用により容易に考案しうる程度のものである旨判示している。そして、成立に争いのない甲第三号証によると、接続金具において円筒状管を接続金具本体の一側方にこれと一体に突設すること、芯管を円筒状管の中心側に接続金具本体と一体にその一側に突設することおよびホースを接続金具に取付けるに当り円筒状管と求心方向に圧搾して取付を行なうことが周知技術であることを認めえないわけではない。しかしながら、前顕甲第二号証によると、引用例は先に2において認定したように、プラスチックスパイプの接続に際し溶融装置を使用して一旦これを溶融して挾持環を締付けることにより溶融プラスチックスを挾持環の小孔内に膨出させ、その部分の冷却による突起を作り、小孔部と穿合させることによりパイプを固着させる構成および効果はこれを教示しているが、ゴムホースの接続につき円筒状管ないしこれに類する挾持環に孔を設け押圧ないし締付により孔内部にゴムを膨出喰い入らせることによりホースを固着する構成および効果に関しては全く示唆するところがないことを認めうる以上、他に反証のない本件にあつては、叙上周知技術の存在にもかかわらず当業者において前記の末尾に指摘した相違点を克服し、引用例から本願考案を容易に考案することができるものと認めることはできない。
(むすび)
三 以上説示したとおり、本件審決にその主張のような違法のあることを理由にその取消を求める原告の本訴請求は、他の点について判断をするまでもなく、理由があるものということができるから、これを認容する。
(服部高顕 三宅正雄 奈良次郎)