東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)16号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔編注〕引用意匠は願書に添附された写真(甲第四号証の二および三)が不明確で、その意匠の内容を確定できない。すなわち、正面図および右側面図を示す写真(甲第四号証の二)によれば、引用意匠の上面において凸出している部分と反面において凸出している部分は互い違いでなければならないのに、平面図および底面図を示す写真(甲第四号証の三)は凹凸の関係が全く同一であり、これによれば引用意匠の上面において凸出している部分は反面においても凸出していなければならない筈である。したがつて、引用意匠の平面図、底面図を示す写真は正面図、右側図面を示す写真と喰い違い、引用意匠はその内容を確定できないから、本願意匠が引用意匠と類似するか否かの判断は客観的に不可能である。しかるに引用意匠の内容を確定し本願意匠はこれに類似すると判断した審決は、この点で事実の認定を誤つたものである。
そこで、原告主張の審決を取り消すべき事由(一)〔編注〕の有無について判断するに、甲第四号証の二および三が引用意匠の意匠登録願書に添附された図面代用写真であつて、同号証の二が引用意匠の正面図および右側面図を示し、同号証の三が平面図および底面図を示すものであることは当事者間に争いがなく、成立に争いがない同号証の一によれば、右願書には左側面図および背面図の図示は省略されていることが明らかである。そして、右甲第四号証の三のうちいずれか一方の写真(例えば平面図を示す写真)と同号証の二だけによれば、引用意匠の内容を審決認定のとおり認定することができないことはない。しかし、右甲第四号証の二によれば、引用意匠の上面(平面)において凸出している部分と反面(底面)において凸出している部分が互い違いになつていることが明らかであるのに対し、前記同号証の三によれば、平面図および底面図を示す写真は、これを虚心に見れば、凹凸の関係が同一であるから、引用意匠の上面(平面)において凸出している部分は反面(底面)においても凸出しているものと認めざるを得ない。したがつて、引用意匠の平面図および底面図を示す写真は正面図および右側面図を示す写真と相互に矛盾していることが明らかであるところ、引用意匠の内容は右の四枚の写真に矛盾なく表現されているべきであつて、そのいずれかを重視し他を無視してこれを認定することはできないから、引用意匠の内容はこれを客観的に確定することが不可能であるといわねばならない。被告は、右各写真が一個の形態を表現したものであるとの前提に立つてこれを見れば、平面図および底面図を示す写真は凹凸の関係が逆であるとみるべきである、と主張するが、意匠登録願書に添附する図面代用写真は一個の物品の形態を表現すべきものであるけれども、現実に願書に添附されたものが必ず一個の物品の形態を表現しているとはいえないことはいうまでもないので、図面代用写真は被告主張のような前提に立つてこれを見るべきではなく、むしろ、一切の先入観を排除して虚心にこれを見るべきであるから、被告の右主張は採用の限りではない。そうだとすると、引用意匠の内容を前叙のとおり認定したうえ、本願意匠はこれに類似すると判断し、意匠法第九条第一項により登録することができないとした審決は、原告主張(一)の違法があり、取消を免れない。
よつて、その余の争点についての判断を省略して原告の請求を認容する。
(服部高顕 瀧川叡一 奈良次郎)