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東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)179号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無)

二 当裁判所は、次に説示するとおり、本件審決には、これを取り消すべき事由があるとする原告の主張は、理由がないものと判断する。

(一) 本願発明の要旨(1)の発明について

第一引用例には、第三十一類「軸受」なる類別の下に、「21自動調節軸受」なる項目に、「球形の軸受金を有し、軸心に適合させる」旨の説明と共に、ボール・ソケット型球面軸受の横断面図の記載があり、その構造は、凹彎曲内面をもつ環状外部材の内部に、凸彎曲外面を持つ球形内部部材を組込んだものであることが認められる。

次に、第二引用例には、「特許請求の範囲」の項を、「減摩軸受の部分を外周溝のある内環部材と内側溝のある外環部材の間に挿置された転動部材(例えばボール)と共に緩く組立て、組立てられた一方の環部材を回転し同時に組立体をダイスの傾斜孔中に押し通して軸受外環部材を転動部材の周りに円周方向に縮め内外環部材の転動路を転動部材に平滑且つ正確に合致させることを特徴とする減摩軸受製造方法の改良」とする減摩軸受製造方法についての記載があり、その「発明の詳細なる説明」の項には、内環部材は最初鋼などの柔軟な材料で形成し、外環部材は同様の材料から最初直径を過大に作る旨の記載があり、これらの記載に添付図面第一図ないし第三図を対照して考えると、その外環部材及び内環部材は共に切目のないものであることを認めることができる。第二引用例におけるこれらの記載及び認定事実を総合して考えると、第二引用数例には、ボール・ソケット型球面軸受ではないが、減摩ボール軸受の製造に関し、延性材料からなり、かつ、切目のない外環部材と内環部材とを用い、外環部材を転動部材を介して内環部材の周りに円周方向に塑性変形して組合わせる技術の記載があるものと認めることができる。

一方、ボール・ソケット型球軸受の製作分野における従来公知の技術として凸彎曲面を持つ内部部材を軸線方向の圧力で外部部材に押込め、しかる後に外部部材を内部部材のまわりに半径方向に押圧して外部部材に凹彎曲面を形成し、両部材を組合わせる方法が存在したことは当事者間に争いがない。

以上認定の諸事実を総合すれば、本願発明の出願時において、第一引用例記載のようなボール・ソケット型球面軸受について、その製作方法に関し右認定の従来公知の方法が存在する以上、これに第二引用例記載の前記技術を適用して、内部部材及び外部部材を切目のないものとし、かつ、外部部材は延性材料として、外部部材を半径方向に押圧することにより塑性変形し、両部材を組合わせて製作することは、吾人の経験則に徴し、当業者の容易に推考しうるところと認めるのが相当である。他に、この認定を動かすに足る証拠はない。この点について、原告は、ボール・ソケット型球面軸受と減摩軸受との構造上、作用上及び用途上の相違から、一方の軸受に包含される技術思想を直ちに他の軸受に転用することができるという性質のものではない旨主張するが、ボール・ソケット型球面軸受と減摩軸受とは、共に、軸受なる比較的狭隘な同一の技術分野に属し、製作技術上の特徴ある技術思想の相互転用の可能性を検討することは、当業者の当然になすべきことと認めるのが経験則上相当であり前記のボール・ソケット型球面軸受の製造に関する従来公知の技術の存在を前提とする限り、第二引用例記載の前記技術を転用することに支障はないと認めるのが相当である。

そして、外部部材を延性材料として、これを半径方向に押圧して塑性変形することにより、内部部材と組合わせることが容易である以上、内部部材を延性材料としてこれを半径方向に拡張して塑性変形することにより、外部部材と組合わせることも容易であることは、理の当然である。

以上によれば、本願(1)の発明をもつて、第一及び第二引用例記載のものから容易に推考しうるとした本件審決の認定判断は正当であり、原告主張のような違法はないといわなければならない。

(二) 本願発明の要旨(2)の発明について

第一引用例には前記(一)で認定したような構造のボール・ソケット型球面軸受の図面の記載及び説明があることを認めることができ、また、第二引用例には、同様、前記(一)で認定したような「減摩軸受製造方法」に関する記載があり、この記載に添付図面第一図ないし第三図を対照して考えると、外環部材及び内環部材は、共に、切目のないものであることを認めることができる。そして、第二引用例におけるこれらの記載及び認定事実を総合して考えると、第二引用例には減摩軸受の製造に関し、前記(一)で認定したような技術の記載があると認めることができる。

一方、ボール・ソケット型球面軸受の製作に関する従来公知の技術として、前記(一)掲記の方法が存在したことは、当事者間に争いがない。

以上認定の諸事実を総合して考えると、本願(2)の発明の出願時において、第一引用例記載のようなボール・ソケット型球面軸受について、その製作方法に関し右認定の従来公知の方法が存在する以上、これに第二引用例記載の前記技術を適用して、内部部材及び外部部材を切目のないものとし、かつ、外部部材は延性材料として内部部材より過大につくり、両部材を抜差自在な関係においたうえで、外部部材を半径方向に変形して空隙を縮少し、大きい圧力で外部管状部材の頂面及び底面を造形するようなことは、吾人の経験則に徴し、当業者の容易に推考しうるところと認めるのが相当である。他に、この認定を動かすに足る証拠はない。この点についても、原告は、ボール・ソケット型球面軸受と減摩軸受との間の技術の転用に関し、前記(一)と同様の主張をするが、その理由のないことは(一)で判断したところと同様である。

そして、右認定の方法において、外部部材に代えて内部部材を延性材料でつくり、これを半径方向に拡張変形して外部部材との空隙を縮少することにより、ボール・ソケット型球面軸受を製造することも容易であることは、理の当然であるといわねばならない。

以上によれば、本願(2)の発明をもつて、第一及び第二引用例記載のものから容易に推考しうるとした本件審決の認定判断もまた正当であり、このように構成の点で容易に推考しうるものである以上、これに由来する効果の点においても、予測可能の範囲内にあり、格別顕著なものありということはできないものであるから、結局、本件審決に原告主張のような違法はないといわざるをえない。

(むすび)

三、以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。

(服部高顕 石沢健 奈良次郎)

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