東京高等裁判所 昭和43年(行ス)12号 決定
本件退去強制令書発布処分の執行のうち、相手方を強制送還する部分については、行政事件訴訟法第二五条第二項にもとづきこれを本案判決の確定するまで停止すべきである。
ところで、本件行政処分の執行のうちには、右強制送還のほか、その送還が直にできないときに、送還可能なときまで特定の場所に収容する、収容の執行が含まれる(出入国管理令第五二条五項)ので、右収容についても執行停止をすべきか否かを以下検討する。
前掲疏甲号各証並びに審尋の結果によると、相手方は本件退去強制令書が同人に対し発せられた後、直に仮放免(出入国管理令第五四条)を受け、仮放免期間満了の都度更に仮放免を受けた結果昭和四四年一二月一五日まで仮放免の状態が続いていたもの(同日仮放免期間満了後は新たな仮放免が行われなかつた。)であり、その間肩書住所に居住し、大宮市にある冠生園食品株式会社に勤務して現在にいたつていることが、一応認められる。しかし、このような事情があるからといつて、それだけで相手方が前記収容の執行により「回復困難な損害」を蒙るということはできないのみならず、他に相手方が右収容によつて「回復困難な損害」を蒙ることを疏明するに足りる資料はない。(このような場合、本案判決が確定するまで仮放免の方法により相手方の収容を行わないでおくか否かは、抗告人の裁量に属すべき事柄である。)したがつて、相手方の本件執行停止申立は、送達の部分にかぎり認容できるが、その余は認容すべきでないものといわなければならない。
よつて、本件退去強制令書発布処分につき原審のした執行停止は、送達停止の部分にかぎり相当であるけれどもその余は失当であり、本件抗告は一部その理由があるから、原決定中右失当の部分を取消し、その余の抗告を棄却すべきものとする。
(川添利 荒木 田尾)